第四幕、御三家の幕引
 なんだろう、この、頷くしかできない状況……。やっぱり用事がありますなんて言っても、じゃあ学校帰りに行こうとなるだけだ。くそっ、桐椰くんめ、鹿島くんの前で余計なことを言いやがって……! 鹿島くんに言いたいことが山ほどあるのに、大体は桐椰くんの前だと言えないので今は口に出せない。お陰で桐椰くんへの苛立ちが募った。


「まさか……デートに行く服がないとか言わないよな……?」

「制服でいいですかね」

「……もういっそのこと薄野に借りたらいいんじゃないか?」


 鹿島くんが嘲りでも皮肉でもなく、心底げんなりとした顔と声になっている。そんなに呆れること?

 しかも鹿島くんの代わりに、桐椰くんが馬鹿にしたような顔を向けてくるときた。


「薄野とお前、体型違い過ぎだろ。絶対薄野の服は入らない」

「ねぇ、なんでそんな失礼なこと言うの?」


 絶対イライラに任せてディスったよね?

「つか、薄野は性格があれなだけで普通にめちゃくちゃ美人だから。薄野に似合う服はお前には似合わねぇんじゃねーの」

「それどういう意味? 悪かったですねブサイクで!」


 しかも重ねてくるから、悠長にツッコミを入れてる余裕が私にもなくなった。ブチッと頭の中で何かが切れた音さえした。


「別に、タイプ違うから借りても仕方ねーんじゃねーのって言ってんだよ」

「あー、そうなんだ。てっきり顔面偏差値が違うからってことだと思った。松隆くんに似合う服は桐椰くんには似合わないよーみたいな」


 売り言葉に買い言葉とはこのことか、松隆くんを強調した私に、桐椰くんの目尻はピクッと引きつった。


「あぁ? なんだよ、どういう意味だよ」

「べっつにー、同じ意味だよ、私がふーちゃんの服着ても似合わないっていうのと」

「女子はそういうのあるだろ。細身じゃないと絶対着れない服とかあるし」

「顔だけじゃなくて体型もまだ言う?」

「お前のほうが太ってるとは言ってねーだろ」

「言ってるじゃん! 最初にふーちゃんは細いんだから服入んないって言ったじゃん!」

「お前こそ総と比べんじゃねーよ! アイツに敵うわけねーだろうが!」

「そこ二人、彼氏の前で痴話喧嘩みたいなことするなよ」


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