第四幕、御三家の幕引
 まさかね。(かぶり)を振って自問自答する。きっと土曜日のデートは罠だ。桐椰くんの前でわざわざ約束をしたのは、きっと御三家の出方を伺うためだ。だって桐椰くんはあんな風に怒りながらも、きっと松隆くん達と情報共有して見張りに来てくれるもんね。


「そうじゃなくて、何だ」

「……鹿島くんって実は私とデートしてみたかったのかなって思っただけ」

「ふ、ああそうだな」

「今の笑いに全てが凝縮されてたよね。よかった、私の勘違いだった」

「ところで、松隆の父親と会食というのは? 実は松隆と半分血が繋がってますとでも言われるのか?」


 そうだとしたら面白いね、と語尾についているようにさえ聞こえた。思わず苦虫を噛み潰す。


「だから、それは鹿島くんの嘘だよね」

「さあ、どうだか」

「知らないよ、なんで松隆くんのお父さんとご飯食べることになるのかなんて。こっちが聞きたいくらい」

「いっそのこと頼み込んで松隆家の養子にでもしてもらったらどうだ?」

「はあ?」


 何を素っ頓狂なことを言い始めてるんだ、この人。それこそ素っ頓狂な声を上げたけれど、鹿島くんはそんなに冗談じみた口調ではなかった。


「桜坂家は居心地が悪いんだろ。で、松隆家にはもう一人子供を引き取る余裕もある。松隆の父親は君の母親と知り合いだし、なんなら君の父親の可能性さえあるし、引き取るのを拒んだりしないだろ」

「……何でそんな話に?」

「わざわざ会食なんてするってことは、それなりの話があるんじゃないのかって思っただけさ。もしかしたら薄野に続いてお見合いかもしれないな、松隆の嫁になってついでに松隆家と養子縁組をすると。形は違えど、桜坂家での君の扱いを知って、松隆家に迎えるつもりがあるのかも」


 ……いや、それはない。松隆くんは「許嫁とかそんな話にはならないと思うよ」と言ってたし。……でも許嫁とこれから結婚するのとは別か。


「……っていうか、待って、なんで鹿島くんそんな話してるの?」

「ただの想像だから別にそんなもどんなもないだろ」

「そうじゃなくて……」


 けろりと返してみせるけど、鹿島くんが罵詈雑言以外を私に吐くなんて有り得ない。今の話の意図は何に……。


「とにかく、土曜は絶対に来い。制服で来てもいいがその分俺に借りが増えると思え」

< 192 / 463 >

この作品をシェア

pagetop