第四幕、御三家の幕引
「え、なんで制服で行っただけで貸しになるの」

「は? デート用の服が必要になるからに決まってるだろ」

「え! やだよ、夕方四時集合で三十分で決めてそのまま松隆くんのお父さんとのお食事直行じゃないの!」

「ろくに服選んだこともない君の服選びがそんな短時間で終わるわけないだろ。短時間で終わったとしたらそれはただの強制終了だ、選べてない」

「…………」


 さっきの話の意図なんてどうでもよくなった。やっぱりこの人は私を罵倒しかしない。


「どうせ何もすることなくて暇だろ、時間に余裕を持て。ついでに俺へのバレンタインチョコレートを選ばせろ」

「あ! そうじゃん来週バレンタインじゃん! 鹿島くんにチョコ買わないといけないなんてサイテーだ!」

「だから俺が選んでやるって言ってる」

「それの何が解決になるの?」

「俺が食べたいものを選ぶから後日渡せ」

「つまり私に出費はないと」

「そういうことになる、文句はないだろう」

「あとは鹿島くんに手渡ししないといけないのがなぁー。不名誉極まりないなー」

「寧ろ名誉だろ。ホワイトデーはマカロンでもやる」

「私、あの甘ったるいの好きじゃないから。クッキーとかにして。この間松隆くんが食べてたのがおいしそうだったし、プチマドレーヌ美味しかったからあれがいい」

「高いものを要求するな」


 いや、バレンタインなんてどうでもいいよ、とりあえず。目下の悩みは鹿島くんとのデートと怒りの桐椰くんと松隆くんのお父さんとの食事……。頭がぐらぐらしてきた。私に、どうしろっていうんだ。
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