第四幕、御三家の幕引
「はい、そういうところ。か──明貴人くんもそういうとこよくない」


 なんで言い直したんだ、という鹿島くんの目が私の後ろを向いて、ふん、と笑った。ご明察、今日も御三家はストーカーだ。ただし、桐椰くんと松隆くんの二人。桐椰くんはプルオーバーのグレーパーカーにネイビーのコートで安定の服と配色。松隆くんは深緑のチェスターコートで、スタイルと顔がないと着こなせないコートをさらりと着ていた。やっぱり松隆くんの顔は暴力だ。ていうか、あの松隆くんと一緒に食事するの、嫌だな……。


「鹿島くんと食事のほうが良かったかもな……気分は悪いけど、人目は気にならないし……」

「今しがたの俺の注意を忘れたのか。彼氏と他の男を比べるな」

「松隆くんの顔は凶器レベルにイケメンだからさー。あーあ、っていうか本当に明貴人くんとデートなんて憂鬱。今日服買っても明貴人くんとのデート服だって思うと二度と着る気になれない。妹にあげようかな」

「今日一日俺に恥をかかせないならそれでいいから、好きにしろ。そこ」


 鹿島くんに指示されたショップ前で突然腕を掴まれた。なんだなんだと思う間もなく店員さんの「いらっしゃいませー」という声に迎えられ、鹿島くんが勝手に商品を指差した。


「この中なら……これだな。着てこい」

「そんな横暴な選び方ある?」

「ご試着ですか?」

「お願いします」


 私の意思など無視。店員さんにだけにっこりと笑う鹿島くんに吐きそうだ。赤色の二ットワンピースを抱える店員さんに付き従い、試着室に入る。こんな色着たことがないんだけど……と両手に抱えてまじまじと見た後にしぶしぶながら着て試着室を出れば、「いかがですかー? そのお色、とっても人気なんですよ!」と言われるだけで似合ってるとは言われなかったので、多分似合ってない。渋い顔で鹿島くんを見れば、顎に手を当てて少し考え込む。


「似合わないな」

「……うん」

「じゃあこっち」

「色じゃなくて物自体違うもの持ってくるじゃん」


 鹿島くんが指差したのは店員さんが両手に抱えているもので、パステル系の水色のセーターと紺色の花柄のスカートだった。パステルカラー着ないんだけどなー、と思いながら着て出ると、今度は「あら! とってもよくお似合いですよ!」と。鹿島くんも頷いた。


「それだな、決定」

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