第四幕、御三家の幕引
「日当一万円だとして二日か……」

「君に日当一万円の仕事ができるわけないだろ」

「ていうか、この服でもう松隆くんのお父さんとのお食事まで行っていいかな? だめ?」

「別にいいんじゃないか。個人的な食事だろ? 服指定しないってことはパーティーでもないんだろうし、高校生に背伸びさせるような人じゃないし、変に短すぎるスカートとか前が開きすぎたトップスでなければ問題ない」

「じゃあこれでミッションコンプリートだね、ばいばい」

「靴に問題があるって言ってるだろ」


 くそっ……。早く鹿島くんから解放されたいのに。

 というか、このショッパーと制服、一度帰らないと邪魔では? 思わず首を捻った。


「ねー、荷物置きたいから、松隆くんのお父さんと食事する前に一回帰りたいんだけど。あと三十分くらいで解散しない?」

「君の家まで四時間近くかかるとは初耳だな」

「……明貴人くん、何で私とデートしたいの?」

「暇潰し」


 答える気がないということか。連れられるがままにブーツを履かせられた。黒いショートブーツをいくつか選んで順に履かせられ、最早これは鹿島くんの彼女をさせられるという罰ゲームなのではとまで思えてきた。しかも結局鹿島くんが決めたブーツは二万円弱だった。税込み二万円超だ。しかもやっぱり鹿島くんが買った。


「明貴人くんのお財布事情ってどうなってるの? 成金なの?」

「親の金」

「清々しくて今の明貴人くんは好きになれるかも。でもそこまで私にお金かけるのはさすがにもったいなくない? 親御さんも無駄遣いは承知しないと思うよー」

「使っていい範囲で彼女に使う分にはいいだろ」

「……彼女ねぇ」


 契約彼女だけどなぁ。鹿島くんに何かメリットがあるのだろうか。私と付き合ってる限り松隆くんに嫌がらせができるから、とか? ローファーも紙袋に入れる羽目になって、荷物が多くて疲れてきた。すると、ひょいと横から鹿島くんが紙袋を取り上げる。


「……え、何? 返して?」

「持ってやってるんだよ」

「……何企(たくら)んでるの?」

「彼女の荷物が重そうなら持ってやるだろ。それができない男は付き合う価値がない」

「……本当に、何企んでるの?」

「傍目に駄目な彼氏になるだろ、察しろ」


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