第四幕、御三家の幕引
 淡々と情報交換のような会話をしながらカフェに入り、コーヒーとケーキを注文し、桐椰くんと松隆くんが空席の都合でかなり離れた席についてしまったのを視界に捉えながら「明貴人くんはさぁ……」と切り出す。


「なんだ?」


 そのまま口籠ったけれど、続きを促されることはない。いつも通りの態度は悠然と構えているようにしか見えなくて、私の質問にあまり意味はない気はした。


「……今日、なんで私とデートしてるの?」

「気晴らし」

「……暇だから潰すついでに気晴らしを?」

「そうだな」

「気晴らしになるの、これ」

「話し相手がいるのはいい気晴らしだ」

「普段話し相手いないの?」

「最近は桐椰がいい話し相手だな」

「明貴人くん、友達少なそー」

「松隆より少ないかもな」

「それ相当少ないよ。大丈夫? 私がなってあげようか?」

「そこらの犬に頼みこむほうがまだマシだ」

「犬と違って喋れるよ私」

「犬と違って歯向かうだろ君は」

「四万円って何すれば返済できる?」

「四万円は四万円じゃないか」

「くっ……十一月まで待ってください……」

「利子は高いからな」

「私は高いって思ったのに明貴人くんが決めたんじゃん!」

「だから端数切捨てで四万円で勘弁してやる」

「端数……そうだよね、このトップスとスカートだけでも二万円超えたんだもんね……」


 でも確かに、松隆くんのお父さんとご飯食べる服ならこのくらいの額にはなるよね……。私がコスパのいいブランドを知っていればよかったけれど、松隆くんのお父さんはきっと“値段のわりにいいもの”も見抜く。そうだとすれば、鹿島くんの選んでくれた服はそこそこ妥当な見た目と値段なんだけど……。

 あれ、と首を捻った。普段のお出かけで着れない発表会みたいな服でもないし、寧ろベストチョイスくらいあるのでは? 松隆くんとデートになると松隆くんにも桐椰くんにも申し訳なくなるし、鹿島くんと買った (というか買ってもらった)のは最良の選択だった……?

「あー、なんか明貴人くんがいい服選べてることにイライラするー。なんで私、明貴人くんの選んだ服着てるんだろ」

「素直に松隆に選んでもらえばよかったものを。どうせ松隆のことだから、食事の前に服を買いたいとでもいえば付き合っただろ」


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