第四幕、御三家の幕引
「なぜ仲良く三人揃って身体測定なんぞしなければいけないんだ。間抜けもいいところだ」


 いや、二人揃って身体測定に行くのもだいぶ間抜けだけどね。

 が、まるで空気を読んだかのように、保健室には桐椰くんがいた。保健室のソファに座り込んでいた桐椰くんは私達を見て目を丸くし、私達も同じ反応をする。


「何してるの?」

「具合でも悪いのか」

「いや、なんか女子が怖くて逃げてた」


 ああ……。松隆くんと揃って遠い目をする。桐椰くんの貢がれ事情は横で見てたけど、酷かったもんね。


「お前らは?」

「駿哉に身長抜かされた気がして、暇だから測りに来た」

「あー、確かに、駿哉のほうが高いな」


 並んでいるのを一見して明白だったらしいけど、余計に松隆くんは気に入らないらしく「ちょっと、早く測ろう」と二人を身体測定器に引っ張る。

 まずは月影くんだ。古典的な身体測定器なので、手動で身長を測るタイプだ。松隆くんと桐椰くんが隣から測って、ぱちぱちと目を瞬かせる。


「え? 一七九?」

「え、マジ? お前そんな伸びた?」

「成長期だったらしい」

「らしいじゃねーよ、だってお前、夏は一七五センチもなかったろ?」

「伸びた」

「見りゃ分かるんだよそれは!」


 ほらどけ、と桐椰くんに引っ張られるものの、月影くんはしたり顔だ。改めて見上げると確かにめちゃくちゃに伸びている。


「すごいねツッキー、一八〇センチの大台に乗るのも夢じゃないね!」

「別にそこまで高くならないでいいんだが」

「俺は? 俺は?」

「……一七八・四センチ。遼も伸びたね」

「マジかよ、駿哉に抜かれた……!」


 ショックを受けた桐椰くんの次に、いそいそと松隆くんが身体測定器に乗る。月影くんが測ったところ「一七七・七だな」と。松隆くんは「は?」と不機嫌な声を出す。


「俺が一番小さいってこと?」

「そういうことだな」

「待って、納得いかない。もう一回測って」

「何回測っても同じだろ、こんなの」

「体重は? ……六五キロか……」

「健康に増えてんじゃね? 夏バテで減った後に比べたらかなり増えたろ」

「いや、そんなに。戻って少し増えたくらい。身長考えたら少ないかな……。駿哉何キロ? 駿哉は結構増えたよね?」

「六五キロだった」

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