第四幕、御三家の幕引
「筋トレでも始めたのかよ。普通に増えてんじゃねーか」

「だって明らかに前みたいに細くなくなったじゃん、駿哉」


 身長体重を測ってわいわい騒ぐ御三家、まるで小学生男子。完全に外野からそれを見ていると「かわいい……」と近くで聞こえて、驚いて振り返ればふーちゃんが廊下側の窓から顔を出していた。その目はとろんと少し伏せられている。


「ふーちゃん? なにしてるの?」

「ちょっと熱っぽくて来たんだけど、御三家見てたら萌えるから熱上がっちゃった」

「それ大丈夫?」


 普通に具合悪いんじゃん、と慌てて中に招き入れる。とろんとした目は御三家に萌えてうっとりしていたわけではないらしい。因みに先生不在なので、ふーちゃんは勝手に体温計を探している。


「あー、俺体重変わってない。やべーな」


 そして御三家はふーちゃんの存在に気付かずまだセルフ身体測定中だ。


「遼は別に体型いいからいいんじゃないの? 俺も筋肉つけたいんだけどな」

「でも前よりいいからいんじゃね? つか駿哉がそんな伸びると思わなかった」

「俺も思わなかった」

「成長痛来なかった? そんなに一気に伸びて」

「今更来るものでもない気がするが」

「あ、座高測定器まだあるじゃん。座高測ろうよ」

「やだよ、お前どう見ても足長いんだから」


 ふーちゃんは目当ての体温計を片手に、はー、と溜息を吐いた。


「なにそれ……松隆くんが桐椰くんの腕引っ張るとか何それ……可愛すぎでしょ……本にしたい……」

「本当に具合悪いんだよね? 妄想できるけど具合はよくないんだよね?」

「んー、熱っぽいよー」


 シャツをくつろげるために、ふーちゃんはいそいそとベッドのほうへ消える。漸く気付いた月影くんが顔を向けたけれど、ふーちゃんが消えた方向も方向なので、すぐに目で追うのをやめた。

 手持ち無沙汰になって、私も身体測定器に乗る。桐椰くんと松隆くんがメモリを見て「一五八・八センチだと」「伸びた?」と交互に言う。


「あ、伸びてる伸びてる。春は一五五センチしかなかったよ、確か」

「体重は?」

「それはセクハラだよ」

「身長伸びて体重増えてないと心配だから聞いただけだよ」


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