第四幕、御三家の幕引
 にっこり笑う松隆くんの頭が桐椰くんに叩かれ、私一人でこそこそ体重を測ると、四七キロだった。伸びたのに増えてないどころか春より減っている。確かに、少しお肉が落ちたような気がする。太るよりいいけど。


「うーん……」

「薄野、具合が悪いのか?」


 呻る私はさておき、ベッドの方から出てきたふーちゃんに月影くんが反応する。ふーちゃんは、リボンはつけ直さず、シャツのボタンだけきちんと留め直していた。


「んー、ちょっとだけ。深古都に連絡して迎えに来てもらうよー」

「それなら荷物を持って来よう」

「えー、いいよ、自分でやるからー」

「構わん」


 いいよいいよー、と言うふーちゃんを無視して月影くんは「これは任せた」と桐椰くんに私のチョコを預け、さっさと保健室から出て行った。ふーちゃんは「さすがに私の荷物片づけさせるわけにはいかないから追っかけるー」とそれについて出ていった。


「……ツッキー、ふーちゃんには優しいじゃん」

「優しいっていうか、甘いよね。桜坂にも優しいは優しいわけだし」

「優しい……そうだね、優しい……かな……?」

「アイツも、ああいうことするから余計──……まぁいいか。つかこれ誰?」

「あ、私の」


 紙袋を訝し気に覗き込む桐椰くんの顔は引きつった。隣の松隆くんの笑みにも苛立ちが混ざる。


「ああ……鹿島と買ってたやつね」

「あう」

「まさかこれも鹿島の金……」

「違うよ! これは私のポケットマネー! 御三家みんなで食べてほしいなと思って買ったの! ちゃんと一種類三つずつあるから! チョコミルフィーユ! 私のおすすめはレモン味! 試食して美味しかった!」

「後ろめたいことがあると人って饒舌(じょうぜつ)になるよね」

「なんでそんなこと言うの!」

「……言いたいことはあるけど、ありがたくもらっとく。さんきゅ」


 はぁ、と桐椰くんはやるせなさそうな溜息を吐いて「遼、それ第六西の冷蔵庫に入れといてよ」「俺が?」「だって今手に持ってるでしょ」と促されて、渋々そのまま保健室を出て行った。(はか)ったように松隆くんと二人取り残され、若干の沈黙が落ちる。


「あ、お父さんによろしくね。色々とありがとうございましたって」

「……色々、ね」


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