第四幕、御三家の幕引
「どこに行っても何かしらはあるだろう。食べたいものから探したらどうだ」

「あ、あたしパブロ行きたーい」


 こそこそと無音カメラで御三家の隠し撮りをしていたふーちゃんがさっとスマホを差し出した。パブロとはなんぞや、と私と松隆くんと月影くんが覗き込めば、どうやらチーズタルト専門店らしい。桐椰くんはもちろん知っているらしく、「あぁ!」と顔を明るくした。


「そういえば大阪じゃないと見ないな。確か心斎橋にイートインあったぞ」

「推すねぇ、心斎橋。チーズタルトならおやつだし、とりあえず俺は何か軽く食べるね」

「あ、私もそうする」


 財布だけ持って立ち上がった松隆くんに続いて立ち上がれば、空腹には賛成なのか残る三人も揃って立ち上がった。御三家はやっぱり三人でメニューを覗き込んでフランクフルトが食べたいだのたこ焼きが食べたいから分けろだの仲良くじゃれている。


「あたしずっと思ってたんだけどさ」


 その後ろ姿を見ながら唐突にふーちゃんが切り出すので、さっきの松隆くんの憶測のせいもあってちょっとだけドキリとしてしまった。


「御三家ってカワウソみたいだよね」


 でもその台詞と差し出されたスマホに写っていたカワウソの写真にほっとした。それどころか、重なり合うようにじゃれる二匹と、その隣でどこか別の方向を見ている一匹の図を見ると、激しく同意せざるを得なかった。三人がカワウソに似てるかどうかはさておき、こういう構図を見るとなぜか御三家っぽさがある。


「桐椰くんと松隆くんがなんとも……なんかこう、動物の子供同士感あるんだよね」

「わかるぅー」

「で、月影くんが我関せずみたいな」

「そうそう」

「前に見せてもらったんだけど、中学生の桐椰くんと松隆くんが一個のソファで寝てる写真とか子犬感すごくて」

「えー! なにそれ見たい!」

「見せないけど」


 よからぬ妄想をされると心配したのか、ふーちゃんの欲望を拾った松隆くんがピシャリと言い放った。月影くんは知らんぷりをしているけれど、あの様子なら頼まれると見せちゃいそうだな。

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