第四幕、御三家の幕引
「本当に、松隆くんのお父さんのお陰で……なんか、色々勘違いしてたんだなって分かった。鹿島くんが言ってたことも、私が何も知らないのをいいことに捏造(ねつぞう)したことがあったんだなとか……」

「……本当に、俺の父親があんなことを知ってるなんて、思いもしなかった」


 ふ、と松隆くんは小さな溜息を洩らした。


「最初桜坂に会ったのは、遼が連れてきたからってだけでただの偶然だったし、その後も俺達の下僕として働いてもらうだけでいいって思ってた。……本当に、ただ同じ学校にいるだけの女の子だと思ってたよ」

「私も、最初松隆くんに会ったときは私と住む世界が違う王子様みたいな顔した悪魔だと思ってたから、こんなことになるなんてびっくりだった」

「あぁ、見た目だけは王子様のね」

「あ、他意はないといいますか……」

「兄貴の顔は若干違うんだけど、俺の顔はマジで松隆の血筋なんだなって思うんだよね。昔の祖父と瓜二つだし、父親の高校生の写真だってそっくりだし。この顔のせいで……」


 ははあ、なるほど、なんて頷きたかったけど、頷けるわけがない。めちゃくちゃ美形なのに本命に好かれない遺伝子なんてある? それ多分松隆血筋の趣味に問題があるんじゃないのかな。……なんて私が言えた義理ではないな。ていうか、松隆くんのお祖父さん、めちゃくちゃ美男子だったんだな……。下手したらそれ軍服着てる松隆くんだよ。いや松隆くんだけど。


「まあ、そんな話はどうでもよくて。父親のその話を聞いてうちの家の事情も若干変わって──」

「なぁ総、俺のカーディガン知らね?」

「知らないけど。第六西に置いてた?」


 桐椰くんが帰ってきたので、その話は終わってしまった。でも松隆くんの家の事情が変わったって何……。まさか私に色々話したせいで両親が不仲になったとか……? でもあの話で分かったことって、松隆くんのお父さんが私のお母さんのことを助けてくれてたことくらいだけど……。確かに、私も鹿島くんに言われたときは松隆くんのお父さんを疑ってしまったくらいだし、松隆くんのお母さんも疑いを抱いてしまったのかも……? そうだとしたら誤解どころの騒ぎじゃない……。


「教室にないからそうだと思ったんだけど……カバンに入れてたっけなぁ」

「じゃないの。何色だっけ?」

「グレー」

< 240 / 463 >

この作品をシェア

pagetop