第四幕、御三家の幕引
「君の自意識過剰なくだらない冗談に延々と付き合っている点に関してだけは御三家を尊敬しよう」
「よく言ってるよね、それ。あ、コーヒーなくなっちゃった」
ひょいひょいとコーヒーのおかわりをしに鹿島くんの傍を離れると、背後から探るような視線が追いかけてくる。私の口先だけの煽り文句は、我ながら通常運転のはずだけれど、どうやらそうではないらしい。どれだけ明るく振る舞っても隠されきれなかった闇が、その姿を潜めてしまったとでもいうべきか。それを鋭敏に感じ取った鹿島くんは、きっと、土曜日の食事会での話の内容にあれこれ頭を巡らせているに違いない。
「……どうにも、つまらない話だね」
ある程度は予想がつくんだろう。ふん、と鹿島くんはそのセリフ通りの気持ちを表すように鼻を鳴らした。
「折角の面白そうなイベントだったのに……残念だな」
「残念でした。これに懲りたらもうちょっかいかけるのはやめてください」
「まだお楽しみはこれからだろ?」
顔を上げて、鹿島くんを見る。悪戯が成功するのを待つような、怪しげな笑みは、いつも見ているのと同じものだ。
「……でも、私と付き合ってる限り、御三家に手を出さない」
「そうだね。そういう条件だ」
それなら今は何もできないはず。それなのに、鹿島くんのこの余裕は何なのだろう。再び温かくなったマグカップを両手で持って見つめ返すけれど、そんなことで答えが出るはずがない。
「……私と付き合った時には、もう、罠を仕掛けた後だったとか」
「さあ、どうだろう」
それなら私との契約に反することにはならない……。だって後はその罠の発動を待つだけだから。でも、そんなことができるとしたら、鶴羽樹が手駒になってるとしか思えないけど、肝心の鶴羽樹の情報はまだない。進捗を尋ねるのも失礼な気がするけど、さっき深古都さんがふーちゃんのお迎えに来たタイミングで聞けばよかったかな。
「そんなことよりも、君の目下の悩みは週末にあるんだと思っていたけどな」
「……そのイベントは避けようがないので、やり過ごすことしか考えてないです」
「挨拶してやろうかって言ってるのに」
「明貴人くんが彼氏だなんて、私の知り合いに名乗ってるだけでその場で泣き崩れちゃう」
「喜びのあまり腰でも抜けるのか」
「よく言ってるよね、それ。あ、コーヒーなくなっちゃった」
ひょいひょいとコーヒーのおかわりをしに鹿島くんの傍を離れると、背後から探るような視線が追いかけてくる。私の口先だけの煽り文句は、我ながら通常運転のはずだけれど、どうやらそうではないらしい。どれだけ明るく振る舞っても隠されきれなかった闇が、その姿を潜めてしまったとでもいうべきか。それを鋭敏に感じ取った鹿島くんは、きっと、土曜日の食事会での話の内容にあれこれ頭を巡らせているに違いない。
「……どうにも、つまらない話だね」
ある程度は予想がつくんだろう。ふん、と鹿島くんはそのセリフ通りの気持ちを表すように鼻を鳴らした。
「折角の面白そうなイベントだったのに……残念だな」
「残念でした。これに懲りたらもうちょっかいかけるのはやめてください」
「まだお楽しみはこれからだろ?」
顔を上げて、鹿島くんを見る。悪戯が成功するのを待つような、怪しげな笑みは、いつも見ているのと同じものだ。
「……でも、私と付き合ってる限り、御三家に手を出さない」
「そうだね。そういう条件だ」
それなら今は何もできないはず。それなのに、鹿島くんのこの余裕は何なのだろう。再び温かくなったマグカップを両手で持って見つめ返すけれど、そんなことで答えが出るはずがない。
「……私と付き合った時には、もう、罠を仕掛けた後だったとか」
「さあ、どうだろう」
それなら私との契約に反することにはならない……。だって後はその罠の発動を待つだけだから。でも、そんなことができるとしたら、鶴羽樹が手駒になってるとしか思えないけど、肝心の鶴羽樹の情報はまだない。進捗を尋ねるのも失礼な気がするけど、さっき深古都さんがふーちゃんのお迎えに来たタイミングで聞けばよかったかな。
「そんなことよりも、君の目下の悩みは週末にあるんだと思っていたけどな」
「……そのイベントは避けようがないので、やり過ごすことしか考えてないです」
「挨拶してやろうかって言ってるのに」
「明貴人くんが彼氏だなんて、私の知り合いに名乗ってるだけでその場で泣き崩れちゃう」
「喜びのあまり腰でも抜けるのか」