第四幕、御三家の幕引
十三、囚われた心の在処
 本当に、最初はどうでもよかった。

 御三家の姫──なんて寒い呼び名はさておき、御三家の一員になるというのは都合が良かった。それは、御三家の餌ができることを意味するから。それが女子だというのは、特に幕張匠だというのはとても都合がいい。彼女を襲う理由を持つ人間は多ければ多いほどよかった。

 なんていうのが、最初の話。いざ、蓋を開けてみれば、どうだろう。本当に“御三家の姫”なんて寒い呼び名に相応しく、松隆と桐椰に好意を寄せられていた。思わず笑った。ああ、本当に、笑ってしまう。それは、予想外の、思った以上の成果だ。

 元々、彼女が御三家の一員になるかどうかは微妙なところだった。そもそもあの偏屈三人組が気に入らなければ意味がない。気に入らないなら気に入らないでいい、別の女子なり別の手段なりを考えればいいだけだ。その程度だった、彼女の使い道は。

 それが、この有様なんだから。本当に、最初はどうでもよかったけれど、御三家にとって──松隆と桐椰にとって、大事な人になるなんて、失いたくなくなる人になるなんて、最高の成果だ。

 少しだけ、本当に、ほんの少しだけ、誤算があるとしたら……。

 考えて、頭を振る。そんな誤算は、いいんだ。きっと、それは結末に差を齎すものではない。

 だからこうして、時々ほくそ笑んでしまう。本当に、彼女の利用価値は、案外高いことに。
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