第四幕、御三家の幕引
「俺も詳しく聞いてねぇんだけど……総のお見合いがなんとかってなんだよ」
「ふーちゃんと松隆くんがお見合いしてるのは知ってるんでしょ? それをぶち壊そうって!」
「説明下手か」
「破談にしたいことは散々聞かされた、その理由を聞いているに決まっているだろう」
「ふ、聞いて驚いてください、破談にすると深古都さんが鶴羽樹の情報をくれるのです!」
「そのギブアンドテイクの関係が理解できないのだが」
「んーと、ねー」
私もホットのカフェラテを口に運んで喉を温め、気を取り直してから説明の姿勢に入る。
「深古都さんに、鶴羽樹のこと知らないか聞いたの」
「なんで? あの人が元ヤンだから?」
「とはいえ、年齢を考えれば付き合いのある相手ではないだろう。興信所代わりにでも使ったのか?」
「んーと、ねー……」
面倒くさいなこの人達……! 雅が「俺が女だったら絶対御三家と付き合いたくない、アイツら理屈っぽくてぜってー面倒くさい」とぼやいていたのは存外まともな指摘だと思う。
「……深古都さん、下の代と付き合いがあるから、頑張れば鶴羽樹のことも調べられるんじゃないかなって」
「鶴羽のことって総も調べたって言ってなかったっけ?」
「ああ、言っていた。が、総と深古都さんとでは付き合いの幅が違うからな……。総もそれなりに広く耳があるとはいえ、ここ最近だいぶそういった付き合いは減ったからな。今年の春以後、総の情報網はあまりあてにはならんかもしれん」
「今年の春? 何かあったの?」
御三家と契約した直後、松隆くんは私が幕張匠の知り合いだろうという情報を突き付けた。そんなことを知ってるなんて、何がどこまでバレてるか分かったもんじゃないな、と身構えてしまったけれど、今になって思えば、それは松隆くんが私のことを探る中で、鶴羽樹がわざわざ告げた情報であったに過ぎない。その意味では、松隆くんの情報網が広すぎると断定はできないけど……。
首を傾げれば、二人は顔を見合わせる。話すべきか少し悩んでいる様子だった。
「……まあ、ほら、俺達が喧嘩してたのは、鹿島から聞いただろ、文化祭の後」
「あ……っと、年明けから暫くは、だよね……」