第四幕、御三家の幕引
 透冶くんの死の真相を暴こうとしなければ三人が一緒にいることなんてなかった──。気持ち悪いくらい仲が良い、なんて揶揄したくなる三人が、そんな状態だったなんて、正直想像もできない。


「ああ。で、俺達は好き放題してて……俺は付き合いあるヤツまでいなかったんだけど、総は、不良グループに溶け込んでもいたんだよな」


 桐椰くんはこめかみのあたりをかきながら言い淀む。


「溶け込むというか、友達もいる、程度かな……。付き合う相手は選んでたし……」

「つまり? どういうこと?」

「要は深古都さんと同じだ。その界隈の情報を拾えるように付き合いのある不良がいたんだ、総にはな」


 なるほど、鶴羽樹って、中学の同級生ってだけじゃなくて、付き合いのある不良友達の一人でもあったのか……。


「それが春までだったっていうのは?」

「結局、総にとっての喧嘩と……女って、ストレス発散だったんだよな。透冶が死んで、理由も有耶無耶で、どうしたらいいか分からないって状況に対するストレスの発散。だから透冶の事件調べるって方向性さえ決まれば両方とも必要なくなったんだよ」

「お前にも全く同じことが当てはまるがな」

「うるせーな……」

「それで……透冶くんのこと調べるからもう喧嘩も女遊びもいいや、ってなって、生徒会のこと調べ始めて、ってなったとしても、別に不良界隈と縁切る必要まではなかったんじゃないの? それこそ、そのせいで松隆くんは情報網が狭まっちゃったわけでしょ?」

「あのな、普通に遊んでると忘れそうになるけど、アイツ、すげーお坊ちゃまだからな?」


 いや、忘れないです。見た目が王子様なのと、それよりなにより今がお見合いをぶち壊す作戦会議中であるように、松隆くんを取り巻く色々が庶民には縁のない事象ばかりなので、忘れようと思っても忘れられないです。


「アイツが何かやらかして、松隆の名前に傷がつくとヤバいわけ。だから中学の頃もそうだけど、松隆の名前使って喧嘩と……あ、女は名乗ったことないって言ってたな……とにかく、松隆の名前使った喧嘩なんて、いい迷惑どころか勘当したいレベルの行動なんだよ、松隆家にとっては」


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