第四幕、御三家の幕引
 それはそうだろうな。松隆くんのお父さんレベルになると、息子が夜な夜な不良たちと繁華街で遊んでる、なんて週刊誌ですっぱ抜かれて謝罪会見とかさせられてても不思議じゃない。


「だから、そういう奴らとは縁切っておくにこしたことはないんだよ。情報網が狭まったって、そもそも必要ない情報網なら広く持ってても意味ねーからな」

「……確かに」


 現役で不良界隈に足を突っ込むならまだしも、平和に高校を卒業して進学するだけならどこが誰の縄張りだとか、その誰かは半グレだから関わるべきじゃないとか、バックにヤクザがいるって吹聴してるだけで恐れるに足らずとか、そんなことはどうでもいいことだ。


「ま、その友達も、仲いいヤツがいたってほどじゃないんだよ。せいぜい、喧嘩通じて顔見知りってレベル。お互い貸し借りもない、界隈の世間話するだけの仲。それこそマジで、情報拾うために付き合いあった連中、って感じだな」


 そういう付き合いなら、確かに桐椰くんはできなさそうだけど、松隆くんは器用にやりそうだな……。言われるまで思い出せないくらいの薄い付き合い、でもよく考えれば与えた情報は多かった、ただそんなことさえに気が付けない──そんな相手を選んで付き合う。考えていてなんだか背筋が震えた。やっぱり松隆くんって怖いな。


「で、何の話だったっけ……。そうそう、んで、透冶のことは生徒会通じて調べるってなったから、総はさっさと縁切っちまったってわけ。そうしちまった以上、今更鶴羽のこと探ろうったって、そう上手くはいかねーよな」


 透冶くんのことを探ろうとし始めたのは二月、そこから徐々に、フェードアウトするように付き合いのある不良たちとの関係を切っていったのなら、四月くらいには当てにする“耳”はなかっただろう。それこそ、五月に私の情報を聞きつけたのが松隆くんにとってギリギリ“耳”が機能した最後のタイミングだったのかもしれない。なんなら、鶴羽樹のことを加味すれば、松隆くんは既に情報網を失っていたといってもいいだろう。


「ってわけで、深古都さんから聞けるってのは助かるな」

「前振りが長くて疲れちゃったよ、私。早く松隆くんとふーちゃんのお見合いぶち壊そう?」

「だが、鶴羽樹の何を調べたというのだろうな。動機か?」

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