第四幕、御三家の幕引
 月影くんにここまで言わせるふーちゃん、すごいな。というか、あまり人をほめない月影くんがここまで誉めるのに、二人が付き合っていないのが謎だし、何より残酷だ。月影くんはちょっと、というかだいぶ鈍いところがあるし、ふーちゃんのことを下手に喋らせないほうがいい気がしてきた。


「こういった点について、当の本人から何か提案はなかったのか?」

「提案って?」

「深古都さんから破談に持ち込むいい策を聞いていないのか」

「あー……っと……聞いたんだけど……」


 さっきの今で「私が松隆くんと付き合ってることにすればいいんじゃないかって言われちゃってー」とはとても言えない。「というか、付き合わなくても遊ばれればいいみたいな!」なんてもってのほかだ。


「あんまりいい案じゃなかったっていうか……」

「……おじ様を説得するしかないんじゃないか。もう女遊びはさせないから恋人くらい好きにさせてあげてほしいと」

「それで納得しなさそうだからこんな井戸端会議になってるんだよね? 月影くん、面倒臭くなって適当に言ってるだけだよね?」

「そうでもない、考えてはいる。しかし、いかんせんこの手の話は縁がなく、苦手でな」


 この手の話ってどの手の話? お見合いって意味ではみんな縁がないから確かにその通りだけど、恋愛に関しては縁がないわけじゃないよね? 言い寄って来る縁をジョキジョキ切ってるんだよね、月影くんは。


「でもさぁ、意外だよな。おじさん、自由恋愛主義っぽいみたいなこと言ってたじゃん」


 そういえばそんな話は松隆くんから聞いたことがあったような……。私と許嫁なんてことにはならないから安心しなよとかなんとか言ってたときに、その方針を口にしていた気がする。


「あれ、でも松隆くんって時々お父さんから呼び出されてお見合い行ってなかったっけ?」

「そうだな。それも今回と同じ──総の女遊びに業を煮やしたというか、いい加減落ち着けという趣旨だったが、どちらかというと諫言(かんげん)代わりの紹介が趣旨だったらしくてな。断ることも当然許容されていたようだ」


 ……なんだか益々、私のせいで松隆くんとふーちゃんがお見合いをしている説が有力になってきた。自意識過剰なんて言ってられない気がする。


「……やっぱり私が松隆くんをどうにかする!」

「ほう。名案があるなら聞こう」

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