第四幕、御三家の幕引
 鳥澤くんの悲鳴を聞いた私と桐椰くんは再び顔を見合わせた。多分私も桐椰くんと同じ表情をしている。数ヶ月前に騙した相手から突然電話がかかってきたかと思ったら、相手はよりによって誤解に基づき恨んでた相手……。しかもこれからさせられることを考えると、鳥澤くん、今日は厄日だな……。


「え、えと、ごめんなさい……」

「何を謝っている。謝ることなど何もない」


 謝りたくなる気持ちもわかる。何がなんだか分からないけど、何がなんだか分からないから謝りたくなる。気持ちは分かるよ、鳥澤くん……ごめんね、鳥澤くん……!

「君と薄野の関係について聞きたいんだが」

「え、薄野さん?」


 しかも、聞き方! 月影くんの聞き方、まるで尋問だよ! 娘の彼氏を問いただす父親だよ!

「仲は良いのか」

「仲は……良いってほどではないと思うけど……普通に、あんまり話さないクラスメイトって感じですかね……」


 対する鳥澤くんは、歯切れが悪い上に敬語ときた。よっぽど月影くん相手に緊張してるんだな。ちょっと私と電話を替わってよ、と月影くんに向かって手を伸ばすけれど、月影くんはスマホを左手に持ち替えて私から遠ざけた。


「話したことはあるんだな」

「それはまぁ……」

「じゃあ今から指定する場所に来い」

「え?」

「もう完全に脅迫だよね、月影くん」

「スマホ渡したお前も共犯だぞ」

「じゃあ黙ってみてた桐椰くんだって共犯ですぅー!」

「無理にとは言わんが、君にも協力してもらいたい」


 私と桐椰くんの会話を聞いてか、月影くんは頼むような言い方に変わった。おやおや、と私がわざとらしく手を口に当ててみせると、月影くんの冷たい目が一瞬私に移り、また私から外れた。


「十二月の件に関わることだ。が、蒸し返すつもりではない。あの件に関しては君も利用された側だと思っている」


 通話の向こう側で鳥澤くんが口を噤んでいるのが伝わってくる。返事を考えあぐねているというより、月影くんが何を考えているか分からずに困惑しているような雰囲気だ。

 でも、そうか……。鳥澤くんは、鹿島くんに雁屋さんの件を相談しただけで、鹿島くんと鶴羽樹に利用されたなんて思ってないんだもんな……。

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