第四幕、御三家の幕引
 ただ、鹿島くんが鳥澤くんをどう利用したのか……。頭の中でぐるぐると渦巻き始めた疑問は、鳥澤くんの「分かった、行くからLIMEに送ってくれ」という声で一時的に霧消(むしょう)した。


「すぐに送る。じゃあな」


 通話を終えたスマホを返された後、今度は私が今いるカフェの住所を送る。すぐに既読がついて、「急にごめんね」と打っている途中で「三十分もあれば行けると思う」と連絡がきた。


「……月影くん、鳥澤くんと、あの件の話はしたの?」

「……いや。君が見た遣り取り以外には何の話もしていない」

「……そんな関係のままだと……」

「……ちょうどいいから鶴羽の話も聞けばいい。あの日は、鶴羽の話を聞く余裕など到底なかったからな」


 次いで吐き出された重苦しい溜息が、その余裕のなさを物語っていた。一緒にこの場の空気も少し重くなってしまった気がして、慌ててメニューを手に取る。そろそろお昼の時間だ。


「とりあえず、ご飯食べよ、ご飯! どうせ松隆くん達のお見合いラウンジなんて高級でご飯食べてたら破産しちゃうし!」

「コーヒー飲んでも破産しそうだけどな」

「やだな、桐椰くんはコーヒー飲めないんだから破産しないでしょっ」


 奪われたメニューで頭を叩かれた。本当のことを言っただけなのに。

 そんなことをしてお昼を食べている最中、カランカランとお店の扉の開く音と一緒に、鳥澤くんが入って来るのが見えた。リュックを背負っているので、もしかして予備校で勉強とかしてたんじゃ……と思っていると、コートの下に見えたのは制服で、間違いなく予備校で勉強をしていたときに呼び出してしまったようだ。申し訳なくなったけれど、月影くんは悪びれる様子がない。


「ごめん、お待たせ」

「いや、時間通りだ」


 急いでやって来たせいだけではなく、きっとこのメンツの中に放り込まれる緊張感で、鳥澤くんの表情は強張っていた。しかも座る席は、月影くんの目の前だ。隣よりマシとはいえ、正面に座られるのもなかなか威圧的に違いない。


「えっと……それで、その……今回は何かあった……んでしょうか」

「あ、鳥澤くんは何も悪いことはしてなくてね! というか、多分悪いことしようとしてるのは私達でね!」


 やはりどもりながら敬語、慌ててフォローを入れるも、鳥澤くんの緊張は解ける気配がない。


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