第四幕、御三家の幕引
「俺、薄野とそんなに仲良くないし! そんなにっていうか、同じクラスにいる女子みたいなレベルだし! ただでさえハードル高い彼氏役を二時間後にそのレベルの関係の女子とやれって無理だろ!?」
一度は情報量の多さに圧倒されたみたいだけど、そういえばさすが特待生、よくよく考えれば学力はこの二人に並ぶんだ。……いや、月影くんは別格かもしれないけど。
その別格の月影くんは「はぁ?」とでも聞こえてきそうな表情で首をわずかに傾けた。
「無理か無理でないかではない。やれ」
「なんでだよ! ……確かに月影と桜坂さんには……迷惑をかけたし、どんなに謝っても足りないとは思ってるけど……」
「いや、それはどうでもいい。電話でも言ったとおり、俺にとっては君も被害者の一人だ。だからそんなこととは無関係に個人的に頼んでいる」
「余計に意味分からねーよ! つか頼んでねーじゃん! 命令じゃん!」
ああ、可哀想な常識人の鳥澤くん……。なまじ私達に負い目があるからこの場から逃げ出すこともできない良心もあるんだろう……。最初に御三家に会った時も思ったけど、実は私達って結構悪者だよね……。
が、やはり鳥澤くんはいい人だ。額を押さえて「や、ごめん……ちょっと興奮しすぎた……」となぜか反省し始めている。どこからどう見ても、10:0で私達が悪いんだけどな。
「……あの、そもそも何で……破談にするの……?」
「総も薄野も乗り気ではないが両親は乗り気だからだな」
「……花高って本当に政略結婚があるんだなあ」
俺がつるんでるヤツらはそういうのに縁がないから、と鳥澤くんはしみじみ頷いた。この二人に関しては所謂“政略結婚”とは少し違う気がするけど、その説明は割愛しておこう。
「……でも薄野ってすごいお嬢様じゃないっけ? 俺がしゃしゃり出たところで笑い飛ばされるのがオチだと思うんだけど……」
「総のおじ様はそんな人ではない、俺が保障する」
「あんま気にしなさそうだよな。栄一兄さん──総の兄貴も、彼女さんは中学の同級生で、普通の家だしな」
「そうなの?」
松隆くんのお兄さんの彼女の話なんて初耳だ。思わず食いつくと「会ったことあるんだけど、綺麗な人だよな」と桐椰くんと月影くんは頷いた。
一度は情報量の多さに圧倒されたみたいだけど、そういえばさすが特待生、よくよく考えれば学力はこの二人に並ぶんだ。……いや、月影くんは別格かもしれないけど。
その別格の月影くんは「はぁ?」とでも聞こえてきそうな表情で首をわずかに傾けた。
「無理か無理でないかではない。やれ」
「なんでだよ! ……確かに月影と桜坂さんには……迷惑をかけたし、どんなに謝っても足りないとは思ってるけど……」
「いや、それはどうでもいい。電話でも言ったとおり、俺にとっては君も被害者の一人だ。だからそんなこととは無関係に個人的に頼んでいる」
「余計に意味分からねーよ! つか頼んでねーじゃん! 命令じゃん!」
ああ、可哀想な常識人の鳥澤くん……。なまじ私達に負い目があるからこの場から逃げ出すこともできない良心もあるんだろう……。最初に御三家に会った時も思ったけど、実は私達って結構悪者だよね……。
が、やはり鳥澤くんはいい人だ。額を押さえて「や、ごめん……ちょっと興奮しすぎた……」となぜか反省し始めている。どこからどう見ても、10:0で私達が悪いんだけどな。
「……あの、そもそも何で……破談にするの……?」
「総も薄野も乗り気ではないが両親は乗り気だからだな」
「……花高って本当に政略結婚があるんだなあ」
俺がつるんでるヤツらはそういうのに縁がないから、と鳥澤くんはしみじみ頷いた。この二人に関しては所謂“政略結婚”とは少し違う気がするけど、その説明は割愛しておこう。
「……でも薄野ってすごいお嬢様じゃないっけ? 俺がしゃしゃり出たところで笑い飛ばされるのがオチだと思うんだけど……」
「総のおじ様はそんな人ではない、俺が保障する」
「あんま気にしなさそうだよな。栄一兄さん──総の兄貴も、彼女さんは中学の同級生で、普通の家だしな」
「そうなの?」
松隆くんのお兄さんの彼女の話なんて初耳だ。思わず食いつくと「会ったことあるんだけど、綺麗な人だよな」と桐椰くんと月影くんは頷いた。