第四幕、御三家の幕引
「拘るのであれば長男の嫁から拘るだろうからな。栄一兄さんが中学生当時に家柄も何もなく本人が好きだという理由だけで選んだ彼女を否定しないのであれば、基本的には当人達の気持ちを尊重するのだろうな」
「でもあれは文句言えねー気がするけどなあ。すごく美人ってわけじゃないけど、綺麗で品があるっつーの? 今だって一ツ橋にいるんだろ?」
「ああ。総合すると、今時の淑女という感じだな」
ほう……。松隆くんのお兄さん、さすがいい人を捕まえてるんだな……。松隆くんのお父さん曰くの本命に好かれない遺伝子を、お兄さんは受け継がずに済んだらしい。
「だがその点なら鳥澤も問題ないんじゃないか。数少ない特待だ」
「女子にも人気あるだろ?」
「君らに褒められてもなあ……」
素直には喜べない、とその横顔に書いてある。それもそうだよね。
「フォローはする。だから四の五の言わず彼氏役をしておけ」
「だから全然頼む姿勢じゃないんだよなあ……」
「演技はお手のものだろう? 桜坂だけでなく俺達も騙したほどだ」
「…………」
鳥澤くんは頭を抱えている。困惑と混乱と羞恥で頭がおかしくなりそうに違いない。大体、関係ないとか言いつつ、十二月の話をちょいちょい持ち出す月影くんが悪い。
「……あの、二人が嫌がってるってだけでそんなに一生懸命破談にする必要って……ある……?」
「さすがだな、そこに気付けるのであれば薄野の両親も納得するだろう」
「誤魔化すなよ! 電話のときに十二月の件に関係してるって言ってただろ!」
チッと月影くんが舌打ちした。多分「臨機応変に動ける利口さは扱いにくさの裏返しだな……」とか思ってるに違いない。桐椰くんは、一度話した以上仕方ないんじゃないかと言わんばかりの表情で「お前、鶴羽とどんな感じで知り合ったって言ったっけ」と十二月の話に話題を変える。
「鶴羽と? ……あの、写真が入ってて、その写真の裏に書いてあった連絡先に連絡したことから始まったんだけど……」
そうだ、雁屋さんの写真から始まったんだった。その説明をさせるのはマズイ。
「あの、鶴羽樹って月影くんのこと何か言ってた?」
「ん? 何かって……」
「ほら……その、月影くんの高飛車で人を馬鹿にした感じが嫌いとか」
「でもあれは文句言えねー気がするけどなあ。すごく美人ってわけじゃないけど、綺麗で品があるっつーの? 今だって一ツ橋にいるんだろ?」
「ああ。総合すると、今時の淑女という感じだな」
ほう……。松隆くんのお兄さん、さすがいい人を捕まえてるんだな……。松隆くんのお父さん曰くの本命に好かれない遺伝子を、お兄さんは受け継がずに済んだらしい。
「だがその点なら鳥澤も問題ないんじゃないか。数少ない特待だ」
「女子にも人気あるだろ?」
「君らに褒められてもなあ……」
素直には喜べない、とその横顔に書いてある。それもそうだよね。
「フォローはする。だから四の五の言わず彼氏役をしておけ」
「だから全然頼む姿勢じゃないんだよなあ……」
「演技はお手のものだろう? 桜坂だけでなく俺達も騙したほどだ」
「…………」
鳥澤くんは頭を抱えている。困惑と混乱と羞恥で頭がおかしくなりそうに違いない。大体、関係ないとか言いつつ、十二月の話をちょいちょい持ち出す月影くんが悪い。
「……あの、二人が嫌がってるってだけでそんなに一生懸命破談にする必要って……ある……?」
「さすがだな、そこに気付けるのであれば薄野の両親も納得するだろう」
「誤魔化すなよ! 電話のときに十二月の件に関係してるって言ってただろ!」
チッと月影くんが舌打ちした。多分「臨機応変に動ける利口さは扱いにくさの裏返しだな……」とか思ってるに違いない。桐椰くんは、一度話した以上仕方ないんじゃないかと言わんばかりの表情で「お前、鶴羽とどんな感じで知り合ったって言ったっけ」と十二月の話に話題を変える。
「鶴羽と? ……あの、写真が入ってて、その写真の裏に書いてあった連絡先に連絡したことから始まったんだけど……」
そうだ、雁屋さんの写真から始まったんだった。その説明をさせるのはマズイ。
「あの、鶴羽樹って月影くんのこと何か言ってた?」
「ん? 何かって……」
「ほら……その、月影くんの高飛車で人を馬鹿にした感じが嫌いとか」