第四幕、御三家の幕引
「君が俺をどう見ているのかはよく分かるな」
月影くんは声と目がいつも冷ややかだから怒られても怖くないもんね。ぺろっと月影くんに舌を出す私の斜め前で、うーん、と鳥澤くんは考え込んだ。
「月影のことをどう思ってるか、みたいな話は聞かなかった気がするなあ……。というか、多分鶴羽は月影のことはなんとも思ってないんじゃないかな……」
「なんで?」
桐椰くんの投げかけた疑問は当然のものであるはずなのに、鳥澤くんは口を噤んだ。雁屋さん絡みだということだろうか。
「……いや、それは……」
「俺達に配慮して口に出せないなら、口に出してもらったほうが配慮だが?」
鳥澤くんの視線が彷徨う。どうやら御三家絡み──というよりは。
「総絡みか?」
「……ああ。鶴羽は、松隆のことが嫌いなんじゃないのかと思ったんだよね」
それは、鹿島くんのことを聞いているとしっくりくる話だ。
「月影を嵌めたいなら協力してやるとか、利害は一致してるとか……そういう感じのこと言ってたから、多分月影自身には何もないんだろうなと思ってたんだ」
「鶴羽がコイツを狙ったとか、そういうこともなかったのか?」
桐椰くんが私を示したけれど、鳥澤くんは眉間に皺を寄せたまま首を横に振った。
「いや……それが、その……これで月影が退学になれば、御三家も一人欠けるとか……追いつめられるとか、そういうことを言ってた気がするんだよね」
……それなら、鹿島くんの言ってたこととも一致する。松隆くんを追いつめるために、透冶くんから順次、落としていったのだと……。
「追いつめるって、別に総だとは限らなくね?」
「……それが、復讐だって言ってたんだよ」
少しずつはまっていきそうだったピースが、一瞬で盤面から弾かれた。復讐……? その言葉に疑問を抱いているのは私だけではないけれど、その疑問の種類は違う。復讐の理由も問題だけど、何より、鹿島くんは、そんなものはないと言っていた。ただ嫌いだからと。復讐なんて、一言も、頑として口にしなかった。
なぜ。
「もうちょっと詳しく覚えてねぇか?」
「悪い、俺も鶴羽と会ったときは緊張してて……確か、復讐だって言ってたんだ……あの日の復讐だ、って……」
月影くんは声と目がいつも冷ややかだから怒られても怖くないもんね。ぺろっと月影くんに舌を出す私の斜め前で、うーん、と鳥澤くんは考え込んだ。
「月影のことをどう思ってるか、みたいな話は聞かなかった気がするなあ……。というか、多分鶴羽は月影のことはなんとも思ってないんじゃないかな……」
「なんで?」
桐椰くんの投げかけた疑問は当然のものであるはずなのに、鳥澤くんは口を噤んだ。雁屋さん絡みだということだろうか。
「……いや、それは……」
「俺達に配慮して口に出せないなら、口に出してもらったほうが配慮だが?」
鳥澤くんの視線が彷徨う。どうやら御三家絡み──というよりは。
「総絡みか?」
「……ああ。鶴羽は、松隆のことが嫌いなんじゃないのかと思ったんだよね」
それは、鹿島くんのことを聞いているとしっくりくる話だ。
「月影を嵌めたいなら協力してやるとか、利害は一致してるとか……そういう感じのこと言ってたから、多分月影自身には何もないんだろうなと思ってたんだ」
「鶴羽がコイツを狙ったとか、そういうこともなかったのか?」
桐椰くんが私を示したけれど、鳥澤くんは眉間に皺を寄せたまま首を横に振った。
「いや……それが、その……これで月影が退学になれば、御三家も一人欠けるとか……追いつめられるとか、そういうことを言ってた気がするんだよね」
……それなら、鹿島くんの言ってたこととも一致する。松隆くんを追いつめるために、透冶くんから順次、落としていったのだと……。
「追いつめるって、別に総だとは限らなくね?」
「……それが、復讐だって言ってたんだよ」
少しずつはまっていきそうだったピースが、一瞬で盤面から弾かれた。復讐……? その言葉に疑問を抱いているのは私だけではないけれど、その疑問の種類は違う。復讐の理由も問題だけど、何より、鹿島くんは、そんなものはないと言っていた。ただ嫌いだからと。復讐なんて、一言も、頑として口にしなかった。
なぜ。
「もうちょっと詳しく覚えてねぇか?」
「悪い、俺も鶴羽と会ったときは緊張してて……確か、復讐だって言ってたんだ……あの日の復讐だ、って……」