第四幕、御三家の幕引
「俺達くらいだとそうなるから今回はオープンな場にしたんじゃない? 薄野さんと松隆のお見合い」


 さすが鳥澤くん、話がもとに戻った! 伊達にふーちゃんが優良物件呼ばわりしていない。


「そうだな……顔を合わせるのも初めてではないだろうし」

「聞いたときは爆笑したけどな。『お見合いね、はいはい。って行ったら、めちゃくちゃ見覚えある女が座ってたんだよね。向こうもそうだから、俺のことを見た瞬間に目を点にして──松隆くんは好みじゃないんだよねぇ……って言いやがった』って」


 ふーちゃん……。その強気な台詞に、聞いてる鳥澤くんが怯えてるよ。そういえば柱ドン事件なんてあったね。


「で? 総達が見える位置にどうやって陣取るんだよ」

「ああ、そうだ、話の腰が折れてしまっていたな」


 すみませんね、なんで窓際なのか聞いてしまって。


「その点に関しては問題ない。店を出る前に深古都さんに連絡をしておいた」


 何? なぜここで深古都さん、と(いぶか)しがると、月影くんは若干 (本当にすごく若干だ、分かる自分を誉めてあげたい)得意げな様子で眼鏡を押し上げた。


「元々、総達の縁談の席を予約したのは深古都さんらしい。その席がよく見える席を桜坂の名前で予約してもらった」

「コソコソスマホ見てると思ったらそんなことしてたのか!」

「ツッキーの手際の良さが怖いよ……」


 しかもやっぱり、お見合いぶち壊しにのりのりだ! 深古都さんも深古都さんだけど。


「で? こんなところにいたら見えるんじゃねーの?」

「エレベーターから死角に立てばいいだろう」

「だから、馬鹿か? みたいな顔すんじゃねーよ!」


 そんなこと言ったってエレベーターはガラス張りだし、高校生四人組がこんなところでうろうろしていたら目立つに決まっている。鳥澤くんは制服だし。


「おそらくエントランスから入ってくれば使うエレベーターはここだ。吹き抜けを挟んで反対側にいよう、さすがに対岸のことまでは気にされないはずだ」


 はーい、と三人揃って返事をした。遂に月影くんが音頭をとりはじめてしまった。なんだか文化祭のときみたいだ、メンバーも目的も違うし、ちょっと不謹慎かもしれないけれどわくわくしてしまう。


「なんか楽しいね! 松隆くんのお見合いぶち壊し!」


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