第四幕、御三家の幕引
 なんて松隆くんの服装はどうでもいい。そんなものを通り越して、松隆くん親子が並ぶと、開いた口が塞がらなくなるほどのイケメン親子との感想しか抱けなかった。


「松隆の父親も若いんだなあ……」

「いや、あれは若くない」

「見た目が年を取らないだけだ。俺達が子供の頃からあの見た目だからな」

「マジ……」


 分かるよ、鳥澤くん。私も自分の父親とあれが同い年とは思わないもん。かけ離れてるとまでは思わないけど、確実に若いと思うもん。


「にしても、おじさんが来るんだもんなー。よっぽど本気なんだな、このお見合い」

「そっか、お忙しいもんね」

「鳥澤が出てきたくらいでぶち壊せるかなあ。なあ、鳥澤」


 と、桐椰くんが声をかけると、鳥澤くんは手すりを両手で掴んだまま俯いた。


「……俺、あのレベルの人達の前で、薄野の彼氏名乗るの……?」

「そうだな」

「無理だろ! 月影か桐椰でいいだろ!?」

「俺達は総の父親に顔が割れてるから」

「絶対面倒だからやりたくないだけだろ!」


 私もなんだかそんな気がしてきたよ、桐椰くん、月影くん。桐椰くんは手すりに背中を預けて「ほら、俺達がそういうことすると、どのタイミングでなんで別れたかみたいな話しなきゃいけないじゃん」とそれらしい理由をつけているけれど、だから余計に怪しい。


「総達、入ったな。俺達も行こうぜ」

「そうだな」

「試合前より緊張するんだけど……」

「鳥澤くんって本番に強いタイプ?」

「フリースローはあんま外さないかな……」

「ほう、期待しているぞ」

「だからやめてくれよ!」


 なんだか月影くんと鳥澤くんの間の空気が(やわ)らいできた。最初はどうなることかと思ったけど、月影くんとしては、自分は水に流すから鳥澤くんも気にしないでやってくれ、みたいなつもりだったのかな。そうだとしたら随分な博打だといえるけど、結果的にいい目がでたらしい。

< 305 / 463 >

この作品をシェア

pagetop