第四幕、御三家の幕引


「ご挨拶が遅れてしまってすみません。友人の月影駿哉です」

「桐椰遼です」

「あ、桜坂です」

「鳥澤です」


 月影くんが頭を下げ、桐椰くんが挨拶し、とするのに続けて私と鳥澤くんも慌てて頭を下げた。ふーちゃんのお父さんは「ああ、ご丁寧にどうも。芙弓の父です」とのんびり答える。


「遼くんに駿哉くんも揃ってとなると、どうせ野次馬だろう」


 松隆くんのお父さん、そんな言いにくいことをはっきりと──! 私と鳥澤くんは視線を泳がせるが、桐椰くんと月影くんはちょっとばつが悪そうに顔を見合わせて「いや、まぁ」「すみません、つい」と短く返事をした。そうだよね、二人は知り合いだもんね。


「総二郎から聞いたのかい?」

「聞いたというか……」


 桐椰くんがどもる。くそっ、月影くんなら多分いい言い訳を思いつくのに、何か喋ろうとする気配がない。こういう嘘が吐けないタイプだな、月影くん。鳥澤くんには大きい嘘を吐いていたくせに。

 でも、松隆くんのお父さんは気にした様子はなく、ははは、と笑っただけだった。


「まぁ、高校生のこんな場なんて珍しいしね。来たくなるのも仕方がない」

「……すみません」

「折角見物するならもっと近くで見ればよかったのに」

「いやそれはさすがに無理じゃ」


 間髪入れない桐椰くんのツッコミ、ごもっともだ。松隆くんのお父さんはこんな時まで冗談なのか本気なのか分からないあたり松隆くんのお父さんだ。……いや、冗談だろうけど。


「でも、残念だね」

「え、何がですか」

「ほら、今日で最後だから。もう見物することができないだろう」


 最後……? つまりもうまとまってしまった? ばっ、と私と桐椰くんは慌てて顔を見合わせる。まとまってしまったとなると、深古都さんから鶴羽樹の情報を貰えない。それでは困る! ここからどうにか破談にするには──鳥澤くんが彼氏ですの強行策しかない。すぐさま視線を向ければ、鳥澤くんはぶんぶん首を横に振った。さすがにこの場で今更それはハードルが高いどころじゃない、とその目が雄弁に語っている。それはそうですね。


「……それで、二人は納得したんですか」


 が、ここで月影くん、正面突破へ足を踏み出す。松隆くんのお父さんは「ん?」と小首を傾げ、ふーちゃんとふーちゃんのお父さんを見た。


< 315 / 463 >

この作品をシェア

pagetop