第四幕、御三家の幕引
松隆くんがドライヤーのスイッチを入れると、鳥澤くんがそっと寄ってきて「桜坂さん」と耳打ちした。因みにやはり鳥澤くんはソファに座らない。十分なスペースはあるのに、ソファの横で屈みこんでいる。
「松隆って、桜坂さんの前だとあんな感じなの?」
「あんな感じって? いつもあんな感じの俺様王子様な暴君じゃない?」
「……うん。そうだね。いつもあんな感じだよね」
納得なんて到底してなさそうな顔で頷かれても……。因みにドライヤーで髪を乾かす松隆くんはいつも以上に気だるげだった。もしかして、みんなは松隆くんを見ても気だるげとは思わないのかな。
「で?」
男の人が髪を乾かすのは早い。すぐにドライヤーの電源を切った松隆くんが、じろりとでもいう擬態語でも聞こえそうな目でこちらを見た。同時に身動ぎした鳥澤くんはすっかり松隆くんに対して畏縮している。
「なんで来てんの?」
「え、えーっと……」
「遼達だけならともかく、鳥澤もいるってことはただの野次馬じゃないよね? どういうつもり?」
冷ややかな松隆くんの声から機嫌の悪さが伝わってくる……! そりゃそうだよね、公衆の面前でお店の従業員にお水をかけられるなんて、プライド高い松隆くんが不機嫌にならないわけないよね!
松隆くんは、ローテーブルを挟んで私の向かい側のソファにどっかりと腰を下ろし、腕と足を組んで私達を見下ろしてくる。同じ高さにいるはずなのになぜか見下ろされている。なんなら、私はソファに座って縮こまっているのでまだしも、鳥澤くんはソファにも座らずに気を付けのまま立っているので、まるで下僕。五月の自分と重なってしまって、思わずほろりと涙が零れそうになった。もしかして、はたから見ていた私はこんな感じだったのかもしれない。
「いやぁ……別に悪いことはしてないですよ……」
「そうだよね。多分、悪いことしようとした矢先に俺が水かけられたから未遂に終わったんだよね」
くそっ、松隆くん鋭いな! なんて言って切り抜けよう……と、そっと鳥澤くんを見ると、鳥澤くんは目だけで「無理です」と答えた。ですよね。
「いやぁ……そのぉ……」
「まさか鳥澤が俺に水をかけて見合いをぶち壊しにしようとでも考えてた?」
「松隆って、桜坂さんの前だとあんな感じなの?」
「あんな感じって? いつもあんな感じの俺様王子様な暴君じゃない?」
「……うん。そうだね。いつもあんな感じだよね」
納得なんて到底してなさそうな顔で頷かれても……。因みにドライヤーで髪を乾かす松隆くんはいつも以上に気だるげだった。もしかして、みんなは松隆くんを見ても気だるげとは思わないのかな。
「で?」
男の人が髪を乾かすのは早い。すぐにドライヤーの電源を切った松隆くんが、じろりとでもいう擬態語でも聞こえそうな目でこちらを見た。同時に身動ぎした鳥澤くんはすっかり松隆くんに対して畏縮している。
「なんで来てんの?」
「え、えーっと……」
「遼達だけならともかく、鳥澤もいるってことはただの野次馬じゃないよね? どういうつもり?」
冷ややかな松隆くんの声から機嫌の悪さが伝わってくる……! そりゃそうだよね、公衆の面前でお店の従業員にお水をかけられるなんて、プライド高い松隆くんが不機嫌にならないわけないよね!
松隆くんは、ローテーブルを挟んで私の向かい側のソファにどっかりと腰を下ろし、腕と足を組んで私達を見下ろしてくる。同じ高さにいるはずなのになぜか見下ろされている。なんなら、私はソファに座って縮こまっているのでまだしも、鳥澤くんはソファにも座らずに気を付けのまま立っているので、まるで下僕。五月の自分と重なってしまって、思わずほろりと涙が零れそうになった。もしかして、はたから見ていた私はこんな感じだったのかもしれない。
「いやぁ……別に悪いことはしてないですよ……」
「そうだよね。多分、悪いことしようとした矢先に俺が水かけられたから未遂に終わったんだよね」
くそっ、松隆くん鋭いな! なんて言って切り抜けよう……と、そっと鳥澤くんを見ると、鳥澤くんは目だけで「無理です」と答えた。ですよね。
「いやぁ……そのぉ……」
「まさか鳥澤が俺に水をかけて見合いをぶち壊しにしようとでも考えてた?」