第四幕、御三家の幕引

　……それはそうだ。実際、私の父親を呼んでおきながら、松隆くんを同席させるというのは、話の内容からしてもアンバランスだった。私が父親について誤解していると見当をつけて、誤解を解くべく揃って食事をする、というほうがまだ分かる。お陰で、食事の前は、一体何の話をされるんだと、鹿島くんの言葉に惑わされたのも相俟って、あれこれ想像を巡らせて悩んでしまったくらいだ。


「で、考えても分からなかったから、父親に聞いてみた」

「……お父さんはなんて？」

「……あえて俺を同席させたんだよね、ってことは確認した。桜坂の話はわざと聞かせたんだ、って父親も言ってた。……ただ、理由は教えてくれなかった」


　てっきり答えを聞けると思っていたので、「そう……」と少し消沈したのを声に出してしまった。

　松隆くんのお父さんは、本当は、松隆くんに席を外させて、こっそり私にアルバムを渡して、あの話をする算段を整えていたのかもしれないと、少しだけ考えていた。私が堪えきれずに問い詰めてしまったから結果的に松隆くんに聞かせる羽目になってしまっただけだったんだと。そうでないとしたら、本当に、松隆くんのお父さんの意図が分からないから。


「……それでね、結局、俺なりに答えを出すしかなかったんだけど」

「……うん」

「……父は、俺に、ずっと桜坂の友達でいてほしかったんじゃないかと思って」

「……うん？」


　あの会食の席からどうしてそんなことになるのだろう。単純に、恋愛関係になってほしくなかったというのは、今回のお見合いの件も加味すれば、筋の通る意図ではあるけれど、“恋人になってほしくない”と“友達でいてほしい”は違う。


「……それって、どういう」

「……父親は、きっと、桜坂の母親のことを後悔してるんじゃないかと思って」


　実の父親の恋愛関係なんて知りたくもないんだけどな、と、少し俯き加減の苦笑いには書いてあった。


「……桜坂の母親は……なんていうか、何も知らない俺がこんなことを言うのは烏滸がましいかもしれないけれど、きっと、一人で抱え込んだ人なんだろ」

「……どうなんだろうね」