第四幕、御三家の幕引
──鶴羽樹の母親が八橋家で使用人として働いており、また八橋家の気質も相俟って、両者は幼馴染として良好な関係を築いていた。──

 曰く、鶴羽樹と八橋さんと、そのお姉さんの三人は幼馴染だったそうだ。使用人というと、深古都さんとふーちゃんのような主従関係を想起してしまうけれど、八橋さんのご両親はあまり拘りのない人達で、寧ろ娘達に仲の良い友達がいて喜ばしいくらいに思っていたとか。加えて、鹿島くんが許嫁として現れた後は、四人で遊ぶ仲になっていたと。

 鶴羽樹には一度会ったきりだけど、とても八橋さんと仲が良いなんて想像できない。お陰でその文面には眉を顰めてしまった。海咲さんが亡くなったことで鶴羽樹がぐれたとか、そういうことなのだろうか。そんなことを考えながら読み進めていると、海咲さんの病気が発覚してから、鶴羽樹が地元で問題児として扱われ始めたこと、補導されることさえ生じ始めたことが書かれていた。どうやら私の推測は当たりのようだ。ついでに、海咲さんが亡くなる前後、鶴羽樹が八橋家への出入りを禁じられていたことまで書かれていた。ということは、多分、その頃にはいい加減手を付けられない不良に成り下がっていたということなんだろう。

 ただ、この話、どこか違和感が……。思わず顎に手を当てて考え込んでしまっていたとき、ふーちゃんの「へー、あの王子様がねぇ」という感心した声が飛び込んできた。顔を上げると、桐椰くんと月影くんがいつものとおり談笑している。


「ああ、ああ見えて単純だからな。意地は張るけど、チョコレートケーキ渡しとけば、まあどっかのタイミングで機嫌は治る」

「昔からな」


 ……そうだ。御三家と同じなんだ。

 鶴羽樹と、八橋さんと、鹿島くんが。

 亡くなった海咲さんが透冶くんとして、この四人は、御三家と透冶くんの四人とパラレルになる。

 こんな見方には無理があるだろうか。でも、鹿島くんと八橋さんが二人で話してることなんて想像もできなくて、ただ深古都さんの資料によれば二人は鶴羽樹と海咲さんも含めて仲が良かった。鶴羽樹然り、海咲さんの死によってこの三人の関係性が壊れ、修復されないままでいるとしても不自然じゃない。だって、少なくとも、鹿島くんは海咲さんの許嫁で、今でも写真を持ち歩くくらい、きっと……。

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