第四幕、御三家の幕引
 それに、実際、鹿島くんはよく口にする。幼馴染だからってみんなが仲良しこよしなわけじゃない、あの三人が異常なんだ、気持ち悪いくらいに仲が良い、と。もしかして、自分達三人と比較していたのだろうか。

 呪い。ふと、その言葉が頭に浮かぶ。

 最後に透冶くんと言葉を交わした桐椰くんにかけられた呪い。

 ……もしかして、海咲さんの死の持つ意味は、彼等にとっては単なる悲愴(ひそう)な事件ではなかったんじゃ……。

 しかもそれが御三家か私に関係あるとなれば、探すべき項目は簡単だ。見慣れた字面はすぐに目に入った──鶴羽樹のページに書かれた“幕張匠との接触可能性”。

──数年前 (聴取結果によれば、おそらく中学二、三年生と思われる。)、幕張匠と接触した際、怪我を負わされたことに関して仕返しをしたい(むね)を本人が度々周囲に漏らしていた。接触場所は、アトマス (高祢(たかね)市町谷一丁目二番三十二所在)敷地内と考えられる。怪我は全治二ヶ月の右前腕部骨折。なお、当人の利き腕は右。──

 利き腕を骨折した、その情報に目を見開いた。

『そこでさぁ、腕折った相手のこと覚えてる?』

 ……お母さんのお墓参りに行く少し前だったと思う。放課後、雅と一緒に帰っていたとき、脈絡もなく出てきた話題に少し首を捻った記憶があった。挙句、言われてみれば『そういえばそんなこともあったかも?』といった程度の話だった。

『それがどうかしたの?』

『それがさぁ……亜季──ってか、幕張匠のことを嗅ぎまわってたヤツがいたみたいな話を聞いたんだよね。それが腕折られてーみたいな話してたヤツなんだけど』

『……もしかしてそれが鶴羽樹?』

『わかんねーけど、それっぽいぜ? 相当恨んでるって聞いた』

『なんで? なんて、聞かなくても決まってるか……』

『と思うじゃん、俺も聞いて笑っちゃったんだけどさ、お前のせいで女にフラれちゃったんだって』

 しかも、恨みつらみの中でも一番くだらなくて、しかも身に覚えのない話だったから、笑い飛ばして終わっていた。大方、幕張匠に負けるなんて格好悪い、と彼女にフラれただけなんだろう、と。

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