第四幕、御三家の幕引

(一)背中に囁き呼んだ罪

 松隆くんとふーちゃんのお見合い事件から数日後、御三家による呼び出しをくらい、私は久しぶりに第六西に舞い戻った。舞い戻ったというか、桐椰くんと松隆くんに引きずられて拉致された。しかも、私の座るところは当然のようにソファ、桐椰くんの隣である。

 いろんな意味である意味居心地が悪くなってしまい、困って第六西内を見回した。数ヶ月離れている間に、第六西の様子は少し変わっていた。テレビが撤去され、テレビがあった位置にパソコンが移動、ソファは仮眠用ベッドとローテーブルを挟んで向かい合っている。ベッドに松隆くんと月影くんが腰掛けているので、どうやらソファ代わりに使い始めたようだ。

 さて、松隆くんのご機嫌は今日も若干斜めだ。原因はもちろん深古都さんがくれた対価。私達にとっては非常にありがたいものであったけれど、それを手に入れるためには松隆くんという犠牲が必要だったのも事実。久々の御三家会議は、松隆くんの舌打ちでスタートだ。


「へぇー、俺に恥をかかせればこういうものが貰えることになってたと。そりゃあ是が非でも俺に水をかけないとね?」

「根に持たないでくださいよ、リーダー。あと恥をかかせることじゃなくてお見合いを壊せばオーケーでした、そこのところ誤解のないようにお願いします」


 松隆くんは顔を背けて私の言葉を無視し、イライラしながら何度も足を組み替える。この間のお見合い騒動 (というか水かけ騒動)の傷は癒えていないようだ。


「てか、深古都さんスゲェな……興信所レベルじゃね、これ」

「興信所ってどうやって人のこと調べるんだろうって不思議に思ってたけど、深古都さんみたいな人がいるのかな」

「興信所の技術と深古都さん個人の人脈を同列に扱う君の頭の悪さこそ不思議だな」

「ちょっと黙って、ツッキー」

「三人共黙って。これ、ざっと読んだんだけど、正直俺達と鶴羽は関係ないよね、っていうのが俺の感想」


 急に本題が始まって、慌てて身を引き締めた。桐椰くんも「なんだ急に」なんて顔をしていて、「そうだな」と冷静に頷いているのは月影くんだけだ。なんだか見慣れた光景だけど、久しぶりだな、この感じ。
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