第四幕、御三家の幕引
「俺も同意見だな。深古都さんが鶴羽と俺達を関連付けて情報を集めようとしたのはうかがえるが、関係を裏付けるものがなかったせいで、かえって俺達と無関係であることが浮き彫りになった、という印象だ」

「まー、それは、俺も思ったけど……」


 桐椰くんが言い淀んでいるのはともかくとして、二人の意見には私も賛成だった。

 鶴羽樹について、淡々と深古都さんが(つづ)っていた事実をまとめると、昔は八橋家と鹿島くんと仲が良かった、海咲さんの病気をきっかけに素行が悪くなって鹿島くんとの仲も以前ほど良くはなくなった、海咲さんが死んだ後は鹿島くんと八橋さんとの関わりもなくなった──そんなところだ。あとはせいぜい、幕張匠に大怪我をさせられた日があって、それが海咲さんの亡くなる少し前だったということくらいだ。鶴羽樹と御三家との関係はさっぱり分からない。


「深古都さんは何も書いてないけど、中学のときに何かあったんじゃねえの」

「あ、そっか、三人と鶴羽樹って中学校一緒なんだっけ」

「深古都さんも、中学で何かあったなら当事者である俺達のほうがよく分かってるだろって思ったんだろうね。でもなんの心当たりもないよ」

「俺はほとんど話したことがない」

「駿哉は俺達以外と大体ほとんど話したことないだろ……」


 三人揃って首を傾げている。本当に心当たりがない、どころか関わりさえない、と……。

 ふと、御三家に初めて会った五月のことを思い出した。あの時、松隆くんは……。


「松隆くん、今年……あ、もう去年か。五月、私と初めて会ったくらいに、鶴羽と話したって言ってたよね?」

「ん? ああ、そうだね。ほら、うちの高校に転校してくるって珍しいだろ? それとなく教頭を捕まえて誰なのか聞いてた頃、学校の外でばったり鶴羽と出くわしてね……」


 言いながら、松隆くんは少し考え込んだ。


「……花高に転校生来るんだろ、って話をされたから、知ってるのか聞いたんだよ。そしたら、界隈でわりと噂になってる話だって言われたんだけど……。あの時はなんとも思わなかったけど、こうしてみると、偶然出くわしたとは考えられないか……」

「待て、その話聞いてねーぞ。鶴羽と会ったってことは聞いたけど、コイツと鶴羽が知り合いだってことか?」


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