第四幕、御三家の幕引
「で、その万引き犯の兄貴もまたワルで、しかも高校生だったから、後からソイツの仲間とソイツの兄貴の仲間と、とにかく結構な数を引き連れて出てきて、学校帰りの遥を拉致って俺を呼びだしたってわけ」

「今思うと中々恐怖だよね。高校生って、なってしまえばなんてことはないんだけど、中学生の俺達にとってはめちゃくちゃデカい相手だったから。挙句、チビの遥を学校帰りに拉致監禁でしょ。万引きから始まった犯罪オンパレード週間だったよね」


 松隆くんと桐椰くんは懐かしい昔話のノリで話してるけど、そんな軽い話じゃないよね……? だって少なくとも桐椰くんは大怪我を負ったし、遥くんだってしばらくは一人で登下校できないトラウマを植え付けられていてもおかしくない。こんな話を聞くと、彼方がお兄さんでよかったね、と思える。あんなだけど、彼方の強さは折り紙付きだ。


「犯罪オンパレード週間って……。俺、マジであの時は死ぬかと思ったからな」

「そういえばしばらく入院してたな」

「そういえばじゃねーよ!」

「でもあの高校生、後日彼方兄さんが手下引き連れて叩き潰したんでしょ? それこそ完膚(かんぷ)なきまでに」

「あー、そういえば退院するころに『もう二度と出てこないぞ!』って言ってたな……」


 出てこない、ってどういうことだろう。抹殺されちゃったのかなとさえ思える台詞だ。可愛い弟達のためにどれだけの激痛と恐怖を植え付けたのかな、彼方は。


「ね、っていうか、今の話だと幕張匠に助けられてなくない?」

「いや、助けてくれたんだよ。相手は中学生二、三人と、高校生四、五人いたからさ、弱そうな中学生から半殺しにはしたんだけど、さすがに俺だけじゃ到底敵わない。遼が死にかけてて、遥が泣き叫んでて、俺が殴り殴られ、って感じのところに、偶然通りかかってくれたんだよね。それこそ、あの時に一緒にいたのは菊池だったのかな?」


 雅の名前が出た瞬間、松隆くんの顔が一瞬屈辱に歪んだ気がした。そうだよね、つまり松隆くんは雅にも助けてもらったってことになるんだね。っていうか、弱そうな中学生から半殺しにしたってところはつっこまなくていいかな。いいよね、怖いし。

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