第四幕、御三家の幕引
 お墓の前で会ったときにはできなかった話。それが良い話か悪い話かは分からないけれど、きっと、私の知らないお母さんの話だ。


「……じゃあ、日付が決まったら連絡するよ」

「よろしくです」


 きっと、私が知らないだけの、死んだ母親の想い出をくれるだけの、他愛ない話──。





 パブロを出た後、月影くんのご要望通り道頓堀の前で写真を撮った。月影くんはやはり無表情だけどちゃんと看板通りのポーズをしてくれた。松隆くんは頑として同じポーズはしなかった。お陰で間抜けな写真は四人分しか撮れなかった。

 その後、難波まで歩いて、適当にショッピングモールをぶらついて、ホテルに戻る時間を確認して御堂筋線で梅田まで戻った。ホテルに戻った時間は夕飯の少し前だったので、部屋に荷物を置いた後すぐに夕食会場に向かった。因みに八橋さんはまだ戻っていないらしく、部屋にはスーツケース以外なかったし、会場にもその姿はなかった。

 会場の丸テーブルは都合のいいことに五人席で、どこに座ろうか見回していると、先に席をとっている御三家が見えた。三人は半分部屋着用のようなゆるい私服に着替えていて、お陰でディナーバイキングなのに女子の視線が料理より御三家。どうせまた冷ややかな目で見られるんだろうな……と思いながら三人と同じテーブル、桐椰くんの隣に着席する。


「着替えなかったのか?」

「うん、部屋着はジャージしか持ってこなかったし」

「まぁ荷物は少ないに越したことはないもんね」


 因みに桐椰くんと月影くんが二人共パーカースタイルというなんとも仲良しの構図だ。松隆くんはTシャツとカーディガンで「遼が絶対パーカーだから被らせないようにした」と月影くんを鼻で笑うも、月影くんは「どうせそっくり被ることはない」とマイペース。実際、桐椰くんが紺色のジップアップタイプを着ているのに対し、月影くんはグレーのプルオーバータイプだった。

 ただ、ふーちゃんが合流したときにすかさず二人の写真を撮ったので、さすがの月影くんも非常に渋い顔をしていた。ふーちゃんのエサになることまでは想定してなかったせいだろう。


「で、明日どうする?」


 各自料理を持ってきた後、松隆くんが切り出した。


「清水寺は行くとして、他は?」

「建仁寺が近いのでそこだな。金閣寺も行きたいが……」

「場所は?」

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