第四幕、御三家の幕引
「えっと……そういえば、文化祭の……BCCの最終日、第六西から出た後、三人を待ってるときに、鹿島くんに言われたのを思い出して……」

「何を?」

「ほら、鹿島くんが透冶くんの亡くなった理由を隠す必要って、正直なかったじゃん。それなのになんでBCCで優勝しないと教えないなんて言ったのかと思って、理由を聞いたの。その答えが」

『幕張匠である君を御三家の姫に仕立て上げるためだ』

「私を……要は御三家に溶け込ませるためだったって」


 声を絞り出せば、松隆くんは冷静に考え込む。ここにきて鹿島か、とその横顔には書いてあった。


「……やっぱり、鶴羽の目的はそれだったのかな」

「だから、結局何のためだよ?」

「まあ、少なくとも俺と遼は恨まれてるかもしれないね、ってこと。あといえるのは、鶴羽が憎んでる相手に幕張も入ってるんだろうなってことかな」

「なんで?」

「鶴羽が骨折させられたことと海咲さんが亡くなったこととの関係性を考えるとそうかなって。ちょっと全員で確認しようか。鶴羽の情報は、当然年月日まで特定されてるものはないけど、いつ頃の話なのか、大まかな時期は分かる」


 松隆くんは深古都さんのくれた資料をぺらぺらと捲った後、裏面にシャーペンで時系列表みたいなものを書き始めた。


「多分、ベースになるのは海咲さんの生活。少なくともここで入院生活は始まってて、この日が最後の手術。で、鶴羽が幕張に怪我をさせられたのは、『幕張に復讐する』って息巻いてた噂が出始めた頃から絞れば、少なくとも手術日より前なんだよね」


 時々資料の中身を読み返しているとはいえ、松隆くんの情報総合力には舌を巻いた。ただ読んでいても、そんなことには気づかない。いちいちよく時期とその時の噂とを覚えていられるものだ。

 そして松隆くんがそうなのだから、月影くんも当然そのことには気付いている。頷きながら、松隆くんが書き込む隣に情報を書き込む。


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