第四幕、御三家の幕引
「というか、桜坂が鹿島と付き合ってないなら、深古都さんのこの資料に鹿島の名前があること自体疑問だったんだよね。そのくらい、鹿島と俺達は関係がない」


 桜坂は俺達が知らない何かを知ってるんじゃないの? そう言外に伝わってきたので、思わず目を逸らしそうになってしまい、必死に誤魔化す。


「えー、と、それはつまり……」

「俺達が鶴羽に目を付けたのは、藤木の件と駿哉の件に絡んでたことが分かったからだよね。逆に、鹿島が何らか関与していた話は何も聞いてないわけだよ」

「それなのに駿哉の事件があった日からお前が鹿島と付き合い始めたってのは、偶然にしては出来過ぎだよな。鹿島も関わってんじゃねーの?」


 松隆くんの補足に更に補足したのは桐椰くんだ。ただし、その声音は桐椰くんのものとは思えないほど冷たい。思わず縮み上がった。


「ああそうだ、駿哉の件で鳥澤が言ってたんだけど、鶴羽は駿哉ってよりも駿哉を足掛かりに俺達を落としたかったっぽいぜ」

「なるほどね……。じゃあ鶴羽が狙ってるのは俺達二人に絞っていいのかな」


 松隆くんとふーちゃんのお見合いをぶち壊す算段を整えているときに聞いた話だ。松隆くんは足を組み替える。


「そうなるとやっぱり、あくまで問題にするのは鶴羽だけでいい気もするんだけど、鹿島と鶴羽が友達だったっていうのがどうにも引っかかるんだよね。実際、鹿島は夏頃桜坂に手を出してるし、今も付き合ってるし、ただの偶然にしては出来すぎなんだよ」


 その引っ掛かりは、正しい。夏でいえば、鹿島くんは、雅の事件を知っていたし、わざわざ桐椰くんの前で手を出してみせた。月影くんの事件の後には、透冶くんの事件から全部関わっていたと告白した。そして、私が鹿島くんと付き合うなら御三家には手を出さないという交換条件……。どれもこれも、鹿島くんが裏で糸を引いているといわんばかり。

 ……本当に?

「桜坂、君はいい加減、暴露するべきじゃないか」

「うぇっ?」


 とんでもない台詞に思考を中断されて、とんでもない声がでた。潰されたカエルの呻き声みたいだったと思う、我ながら。

 ただ、私が何か答える前に、松隆くんと桐椰くんがじろりと月影くんを睨んだ。


「暴露って何をだよ」

「俺達が知らなくて駿哉が知ってることがあるの?」

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