第四幕、御三家の幕引
「とにかく、これを足掛かりに俺達も調査はしてみるけど、油断は禁物……二人とも気を付けてね」


 ちょっと気になる別件もあるしね──。そう松隆くんは呟くと、残りの紅茶を飲み干して立ち上がった。月影くんも立ち上がり、桐椰くんが各自のマグカップを回収する。変わってないな、この役割。


「遼、ちょっと話があるから残ってよ。駿哉は桜坂を外に送って」

「面倒なんだが」

「松隆くんが気を付けてねって言ったばっかりだよ? 面倒なんて理由で私を放り出さないでよ!」

「俺がいたところで君の攻撃力も守備力も変化しないことを忘れたか」


 くそっ、月影くんめ。くそっ! 内心で悪態を吐きながら、松隆くんと桐椰くんを背後に残して「じゃあ先に帰るねー」と第六西を出る。二人は「なんだよ、俺だけって」「駿哉は分かってるみたいだからさ、お前にも一応確認」とコソコソ話している。


「ねー、最後に松隆くんと話してたことなに?」

「こっちの話だ。君は自分の身の安全でも心配してろ」

「……じゃあ松隆くんと話してたことは私の身に危険が及ぶ話じゃないってことでいいんですよね?」

「ふ」

「なんで笑うの? 月影くんがそういう笑い方をするの、怪しいときしかないよ!?」

「話は戻るが、幕張の話はいつまで隠しておくんだ?」


 いつかのように冷ややかな声ではなく、素朴な疑問を投じる声だった。月影くんの表情も最近漸く分かるようになってきた。まだまだ分からないことが多いけど。


「いつまでって……いつまでだろう。できるだけ?」

「できるだけとは」

「……言わなくていいなら言わないままのほうがいいよ、私は」

「そのうち、鶴羽は遼と総に接触を図るだろう。その時に君の意に反して暴露されるくらいなら、タイミングを見計らって話しておいたほうがいいんじゃないか」


 そう言いつつ、その声からは、いつかとは違って、あくまで私の自由な判断に任せようという内心が窺えた。私が幕張だろうがなんだろうが、御三家の立てた算段に誤算が生じることはないということなんだろう。

 咄嗟(とっさ)にそう考えてしまったけれど、反芻(はんすう)してみると不可解さがあった。算段って、何の算段だ……?

「ねえツッキー、私が来る前に御三家で何か話してた?」

「君が来る来ない以前に、学校以外でも俺達は会っているからな」

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