第四幕、御三家の幕引
 生徒のタイプ別に進学先が分かれるみたいで、例えば鳥澤くんは「実家から離れたくないから、県内の国立に行けたらいいなと思ってるんだ」と話していた。ふーちゃんは「梅大の推薦受ける予定だよ」と、生徒会役員らしい志望だった。鹿島くんは「都内の私立」としか言ってなかったけど、生徒会長に推薦枠があるってことは鹿島くんは早大なんだな。


「じゃあ桐椰くんは生徒会役員し損だね。推薦受けないでしょ?」

「受けないってか、行きたいとこにない。どうせ俺あんまり向いてないし、推薦……」

「……桐椰くんは別に強面(こわもて)じゃないよ? 可愛い顔だと思──痛いっ」


 ふと、今の話をしていて気になることがあった。というか、この間、月影くんのくれたヒントの意味がよく分からずにぐるぐる頭の中を回っているのだけれど……。


「……桐椰くんと間違えられて襲われた三年生、いたじゃん?」

「ああ。それがどうした」

「……その人、利き手を怪我して、公立の二次に間に合わないんだよね?」

「ああ」

「……いくら桐椰くんと後ろ姿が似てるからって、そんな人と桐椰くんを間違えるのかな?」


 花高から公立を受験するってことは、そういう家庭出身のそういう生徒だってことだ。写真だけからは分からなかったけれど、そんな人と桐椰くんの雰囲気は全然違うだろう。それを間違えるなんてことが……。

 私の訝し気な、不可解そうな疑問に対し、桐椰くんは「ああ」と平然と頷いた。


「間違えるわけねーだろうな。多分、わざと間違えたんだ」

「……え? どういうこと? っていうか、知ってたの?」


 あまりの温度差に面食らったのに、ちょうど先生が入ってきたせいで続きを聞けなくなった。というか、桐椰くんもこれ幸いとばかりに話すのをやめた。授業の合間にも「その話は終わったろ」と言って教えてくれなかった。最近の御三家は私に対して秘密主義だ。

 それはさておき、今日の私には明確なミッションがあった。昼休み、「卒業式の準備を控えているので生徒会室には来るな」というカレシ様の命令を無視し、生徒会室を訪れた。

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