第四幕、御三家の幕引
「でもって、夏に菊池を襲ったのは樹の仲間だし、君を襲ったのも当然樹の仲間。菊池は何も言わなかっただろうけど、君がこの学校にいるってリークしたのも、もちろん樹の仲間だったわけだ。それなりのことは(たくら)んでると警戒しておいたほうがいいんじゃないか」


 私がいるってリークしたのが鶴羽樹の仲間……? はっとして、夏前のことを思い出す。確かに、なぜ私が花高にいるって分かったのか、雅は教えてくれなかった。あれは鶴羽樹の仲間に教えられたことだったから……?

『桜坂亜季と幕張匠が同一人物だってネタで強請られて要求を受け容れざるを得なくなるまで、菊池は何度気絶したんだろうね?』

 ……私が馬鹿だった。夏休み、鹿島くんに言われた台詞を思い出して頭を抱える。

 鹿島くんは、雅が脅されたのがいつだったのか、明確には言及しなかった。雅が脅されたのは、私が思っていたよりもっと前──私に会いに、花高に来る前だ。

 雅は鶴羽樹の顔を知らないみたいだった。ってことは、雅を脅したのは鶴羽樹本人かもしれない。鶴羽樹に脅されて、私に接触してから工場に連れていくまでをやらされたってわけだ……。

 そう考えると、月影くんの事件のときに雅を拉致したのも鶴羽樹だったのかな……。雅は犯人を誤魔化したけど、その理由が、結局、私が幕張匠なんだという事実に脅迫されていたからというのなら、納得はいく。

 雅の不可解な行動まで含めてちゃんと全部繋がった。そう気づいた時には、鹿島くんに腕を掴まれて生徒会室の外に引きずり出されていた。


「ちょ、ちょっと! まだ聞きたいことが」

「もう仕事の時間なんだよ、俺は。生徒会長が卒業式に遅れるわけにはいかない」


 有無をいわさず放り出され、鹿島くんは生徒会室に施錠すると、私を振り向きもせずに講堂のほうへ行ってしまった。「待ってよ!」なんてその後ろ姿に向かって叫んでも反応はなし。

 しかも、鶴羽樹の今までの行動の理由が海咲さんなんだという確信は、ついぞ得られなかった。いや、もうほとんど九十九パーセントまでの確信に来ているのだけれど、鹿島くんにはまんまと誤魔化されてしまった。


「でも、鶴羽樹が何をするつもりか鹿島くんにも分からないとか……」


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