第四幕、御三家の幕引
チッチッチッチ、と壁掛け時計の秒針の音が妙に大きく聞こえ始めた。ごくんと喉が緊張で上下する。
ややあって、八橋さんが口を開いた──そのとき、ベッドの上に置いていたスマホのバイブレーションが鳴った。八橋さんは口を閉じ、私は慌ててスマホを手に取る。
「ごめん、電話だ」
「……うん」
バイブレーションの長さからメールじゃないことだけ確認してそう言ったものの、画面を見た瞬間ゲッと顔が更にひきつった。相手は鹿島くんだ。
八橋さんの前で出るわけにはいかない。慌てて荷物とカードキーを掴んで部屋を飛び出し、幸いにもまだふーちゃんがいないことを確認し、廊下で電話をとる。
「もしもし!」
「≪随分勢いよく出たね。そんなに彼氏からの電話が欲しかった?≫」
電話の向こうから聞こえる声だけでも気分が下がる……。軽口を叩かれたのも相俟って、はぁー、と深い溜息が出た。
「全然欲しくなかったけどタイミングだけはドンピシャだったよ」
「≪あぁ、桐椰と話でもしてた?≫」
「それをいいタイミングなんて言うほど私は悪趣味じゃないですよ明貴人くん。何か用ですか」
「≪彼氏が彼女に電話しちゃいけないか?≫」
「楽しい楽しい修学旅行を邪魔する趣味もないからねー、私は彼氏さんへの電話をするなんて憚られましたよ」
「≪そう、俺は可愛い彼女が他の男に言い寄られてないか心配で仕方がなかったけど≫」
よく嘘でもそんな歯の浮くような台詞が出てくるものだ。お陰で苦虫を噛み潰した。
「で、本当の用事は?」
「≪そうだねぇ、今日の活動報告でもしてくれる?≫」
「私は御三家のスパイか何かなんですかね?」
「≪似たようなもんだろ?≫」
「……別に、御三家とふーちゃん──薄野さんと、海遊館と心斎橋と難波に行っただけだよ」
ふぅん、と楽しそうな相槌が聞こえた。御三家と私が一緒に行動しただけで満足だとでもいうのだろうか。
「≪他は?≫」
「……他にはどこも行ってないけど。本町は通ったくらい。ていうか、大阪の場所なんて言われて分かるの?」
「≪行ったことはあるからな。それで、御三家と何の話をしてたんだ?≫」
ややあって、八橋さんが口を開いた──そのとき、ベッドの上に置いていたスマホのバイブレーションが鳴った。八橋さんは口を閉じ、私は慌ててスマホを手に取る。
「ごめん、電話だ」
「……うん」
バイブレーションの長さからメールじゃないことだけ確認してそう言ったものの、画面を見た瞬間ゲッと顔が更にひきつった。相手は鹿島くんだ。
八橋さんの前で出るわけにはいかない。慌てて荷物とカードキーを掴んで部屋を飛び出し、幸いにもまだふーちゃんがいないことを確認し、廊下で電話をとる。
「もしもし!」
「≪随分勢いよく出たね。そんなに彼氏からの電話が欲しかった?≫」
電話の向こうから聞こえる声だけでも気分が下がる……。軽口を叩かれたのも相俟って、はぁー、と深い溜息が出た。
「全然欲しくなかったけどタイミングだけはドンピシャだったよ」
「≪あぁ、桐椰と話でもしてた?≫」
「それをいいタイミングなんて言うほど私は悪趣味じゃないですよ明貴人くん。何か用ですか」
「≪彼氏が彼女に電話しちゃいけないか?≫」
「楽しい楽しい修学旅行を邪魔する趣味もないからねー、私は彼氏さんへの電話をするなんて憚られましたよ」
「≪そう、俺は可愛い彼女が他の男に言い寄られてないか心配で仕方がなかったけど≫」
よく嘘でもそんな歯の浮くような台詞が出てくるものだ。お陰で苦虫を噛み潰した。
「で、本当の用事は?」
「≪そうだねぇ、今日の活動報告でもしてくれる?≫」
「私は御三家のスパイか何かなんですかね?」
「≪似たようなもんだろ?≫」
「……別に、御三家とふーちゃん──薄野さんと、海遊館と心斎橋と難波に行っただけだよ」
ふぅん、と楽しそうな相槌が聞こえた。御三家と私が一緒に行動しただけで満足だとでもいうのだろうか。
「≪他は?≫」
「……他にはどこも行ってないけど。本町は通ったくらい。ていうか、大阪の場所なんて言われて分かるの?」
「≪行ったことはあるからな。それで、御三家と何の話をしてたんだ?≫」