第四幕、御三家の幕引
 わざわざ鹿島くんのところに来たのは、それが分かるかもしれないと思ったからだったのに、特に成果を得ることはできず。

『それなりのことは(たくら)んでると警戒しておいたほうがいいんじゃないか』

 唯一残された手掛かりは、不気味な警告だけだった。

 相変わらず釈然としない気持ちのまま、とぼとぼと教室に戻ると、教室に松隆くんと月影くんもいて、桐椰くんには「遅かったな」なんて言われた。


「んー……うん。待っててくれたの?」

「いま桜坂を一人で帰らせるわけにはいかないでしょ」


 馬鹿なの、と松隆くんの顔には書いてあった。王子顔の詐欺師め。


「はーい、すいません……」

「どこ行ってたんだよ」

「んー、鹿島くんと別れてきた」

「は?」

「ああ、そうなの?」


 ぽかんと口を開くほど驚いたのは桐椰くんだけで、月影くんはいつもの無表情だし、松隆くんも軽く頷いただけだった。付き合ったときはあれこれ言ったくせに!

「なんで……って、まあそうか、この間、鹿島と付き合ってるのはあぶねーだろって話になったもんな……」

「そのとおりです!」

「君が俺達の忠告に従う素直さを有しているというのなら、今まで起きなかったはずの問題が種々あるんだがな」

「嫌味なツッコミはやめてください、そこのツッキー」

「まあまあ、別れたこと自体はいいから、そんなに目くじら立てることないんじゃない? これで(あし)(しげ)く鹿島のところに通う理由はなくなったわけだし。よかったね」

「なんかリアクション薄い……。あ、でもね、しばらく生徒会室には行こうかなって思ってるんだ」

「は?」

「ひっ」


 さっきまでのどうでもよさそうな表情、なんなら桐椰くんと月影くんよりも私の味方みたいな態度が、嘘みたいに冷たくなった。桐椰くんにも睨まれている。思わず月影くんの影に隠れようとしたら避けられた。酷い。背も伸びていい盾になってくれそうなのに。


「なんで行く必要があるの?」

「なんか……釈然としないっていうか……」

「釈然としないって理由だけでわざわざ鹿島のとこ行くなよ。飛んで火に入る夏の虫だろ」

「ことわざで罵倒しないでよ! 月影くんだけで十分だよ、そういうキャラ!」

「丁度いいから、第六西で別れ話の詳細でも聞こうか」

「えー、そんな楽しいものじゃないよ……」

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