第四幕、御三家の幕引
有無を言わさず腕を掴まれ引き摺られた。なんだか今日の私は引き摺られてばっかりだ。
「つか、わざわざ第六西行かなくても、昼飯食わね? どうせお前らこの後予備校だろ?」
「じゃあお昼がてらどっか行く?」
「そうするか」
私の予定と意見は? なんて言う間も与えられず、方向転換してずるずると今度は下駄箱のほうへ引きずられる。もう自分で歩くから手を放してくれないかな。
しかもお昼の場所の相談もなく、三人で「軽くでいいなあ」「サンドイッチか」「そんな感じかな」と勝手に決めてしまった。桐椰くんはせめてストッパーになってくれると思ってたのに、なんだかな。
そして、私の意見は無視されたまま、サンドイッチでまとまった。お店に着き、カウンターでは松隆くんと月影くんがアイスコーヒーを頼み、桐椰くんがオレンジジュース、と聞かなくても分かる注文。ちなみに私はアイスティー。
サンドイッチは後から運ばれてくるので、四人で飲み物片手に席に着いた。そしたら三人がごく自然にネクタイを緩めるものだから (そしてその姿があまりに美麗だったから)、三人の顔がずば抜けていいことを思い出してしまった。最近麻痺してたけど、この三人は多分ネクタイを緩めるだけで一部の女子を悶絶させることができるといっても過言ではない。
「で、別れ話はどうだったの? その態度からすると随分すんなり別れたんだろうけど」
早速、松隆くんは興味なさそうに訊ねてきた。本当は鹿島くんのことが気になってるくせに、どこまでもひねくれた王子様だ。良いのは顔だけだ、本当に。
「ん、んー……なんだかよく分からなかったんだけど」
「当事者なのに分からないも何もあるか」
「本当によく分からなかったんだってば! 急に、俺と別れていいよなんて言うんだもん」
「別れていいよ、か……」
うーん、と桐椰くんと松隆くんは揃って首を捻った。兄弟でもなんでもない、ただの幼馴染が同じタイミングで腕を組むのだから面白い。
「付き合った経緯からすると納得する台詞ではあるけど、腑に落ちないね」
「俺達としてはコイツが危なくなくなるから願ったり叶ったりのタイミングだけど、鹿島に一切得がないよな」
「そうなんだよね。ところで、鹿島が鶴羽に協力してるかどうかは? 聞いたんだよね?」