第四幕、御三家の幕引
「その可能性もなくはないけど、そんなことされても困んねぇんだよな。リコールでもされたらムカつくけど、どうしても副会長でいたいってわけじゃねーよ、俺は」

「とはいえ、推測としては外れてはないんだ」


 ということは、桐椰くんの人望を下げるのが鶴羽樹の目的……? あまりにも不可解な目的に首を傾げていると、「ほら、襲われた半田先輩は公立の二次を控えてたって話もしただろ」と松隆くんが話を続ける。


「大事な大事な受験で失敗した、しかもその原因が他人にあるとなれば当然腹も立つ」

「被害者の三年生本人はいたって普通の生徒だが、彼がつるんでいたバレー部が厄介者揃いらしくてな。元生徒会指定役員と希望役員だらけだ、懐かしい肩書だろう」


 月影くんにしては珍しく、その口角が吊り上がった。皮肉をいうときだけこんな表情ができるなんて──松隆くんを一瞥(いちべつ)しながら思う──やっぱり類は友を呼ぶんだな……。


「あー、じゃあ、成金で威張った人なのか……」

「そうだな、典型的な成金役員だ」

「で、鹿島は指定役員も含めて成金役員を一掃(いっそう)したから、今、元成金役員として色々思うところはあるだろうね。ただ、鹿島は現生徒会長だし、何よりあの金持ち生徒会でトップに君臨できるレベルの家と財力の持ち主。となれば、どんなに鬱憤(うっぷん)がたまっても、鹿島には逆らえない」

「でも俺は、母親が弁護士って言っても、家庭としては裕福じゃねーからな。俺に何やっても怖くないヤツらのほうが多いだろうぜ」

「ついでに、親友が遼と間違えて襲われたことに対する仕返しという大義名分もある」

「……つまり、親友が襲われたのをいいことにムカつく桐椰くんを責め立てちゃえ! ってこと?」

「非常に頭の悪い説明をするとそうなるな」

「私への罵倒(ばとう)はおいとくとして、理不尽過ぎない?」


 別に桐椰くんは何も悪くないのに……。つくづく、金持ち生徒会の時の役員は自分勝手が過ぎる。私は頬を膨らませるけれど、松隆くんは「まあ、人間そんなもんだよ」と肩を竦めてみせる。


「なんとなく気に食わないとか、自分より恵まれてる気がしてムカつくとか、そういう子供っぽい感情を持つ人なんていくらでもいるし。蝶乃なんてまさにその典型だっただろ」

「そういえば、最近噛みついてこなくなったよね、蝶乃さん」

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