第四幕、御三家の幕引
 そのとおりだ……。鶴羽樹の計画っぽいのは集団リンチ案、ただし成功するとは思えない。成功しそうなのは桐椰くんの評価暴落案、ただし鶴羽樹っぽくない……。雅の事件は単純に桐椰くんと松隆くんのリンチが目的だったんだろうし、鳥澤くんの事件も、月影くんを退学させることが目的だったとしていい。両方とも失敗はしてるけど、目的が分かりやすい。

 だったら、やっぱり集団リンチ案……? 計画が成功する確率が低いのは織り込み済み? 雅の件も鳥澤くんの件も、両方とも失敗してるし、成功するかどうかは鶴羽樹にとってどうでもいいのだろうか……。


「……わかんないね」

「分からない以上、考えても仕方のないことだな。君は鶴羽一派に拉致されないか気を付けておけ」


 月影くんは、食べ終わったサンドイッチの包み紙をやたら丁寧に畳んだ。隣の桐椰くんは軽く畳んでお皿の上に置き、「トイレ」とそのまま席を立つ。松隆くんを見ると、用済みはゴミとばかりに包み紙を手の中で握りつぶしている。うーん、三者三様。というか、多分一番お坊ちゃんなのは松隆くんなのに、こういうときの仕草は粗野なのが不思議だ。


「聞いているか、桜坂」

「はーい、気を付けまーす」

「本当に分かってる? 鹿島のこと言ってるんだけど?」


 ほらね、こういう詰問(きつもん)じみた口調、お坊ちゃまっぽくないんだよ……。

 また怒られちゃった、と眉を八の字にして子犬ぶるけど、桐椰くんはともかく、松隆くんはこんなことに騙されない。


「鹿島が協力しなくなってるならいいんだけど、そもそも鹿島が協力してたって話がどうにも信じにくいんだよね。ただ協力するだけで桜坂にキスまでする?」

「ヒッ」


 言われた瞬間、ドッと心臓が跳ねて変な声が出た。羞恥(しゅうち)(しん)だ。当人の横で平然と口にしないでもらえないかな。


「協力の方法として簡便(かんべん)であればするんじゃないか。減るものではない」


 ……月影くんの斜め上の回答に、どんな顔をして座っていればいいのか分からなくなった。あまりにも真向からの、典型的なデリカシーのない男子の意見過ぎる。


「逆にその程度なわけだろ。キスした程度で俺達が鹿島に目をつけるって思うか、普通?」


< 376 / 463 >

この作品をシェア

pagetop