第四幕、御三家の幕引
「基本的にすげー冷静だし……でも冷たくはないんだよな。生徒会の仕事として割り切ってんのかもしれないけど、なんつーんだろう、駿哉ほどじゃないけど、合理的? 少なくとも、逆恨みとかはくだらねぇって言いそうだな」

「であれば、鶴羽が鳥澤の件で顔を出した理由を考えたいところだが」

「隠れる必要がなくなったとか?」

「そうであれば、鹿島が別れていいと言った理由にも納得がいく。最早、鶴羽に協力しておく必要はなくなったということだからな。だが、それは結局、鶴羽の最終目的が分からない限りは分からない話、堂々巡りだ」

「……まあ、存外俺達の考え過ぎかもしれないけどね。半田先輩の件は、もしかしたら遼が体育館裏でリンチされるくらいの話かもしれない」

「されるくらいとか言うなよ、もしゴリラみたいなヤツにリンチされたらどうすんだ」

「いや、まあ一応真面目に考えてはいるよ。駿哉の件も考えれば、あんまり俺達は単体で動かないほうがいいからね。意外とえげつない罠が待ってるかもしれないし。少なくとも、遼がそういうことになれば俺がついて行くよ」


 やっぱり、御三家は下手に周りを信用しさえしなければ隙はないんだよな。うーん、と首を捻る。私の考える限りでは、鶴羽樹が何をしようと、もう成功する未来はなさそうだ。


「で、そういうことだから。話は戻すけど、鹿島には気を付けなよ」

「えー……うん……」

「別れたんだからもう会う必要はないよね?」

「……そうですね?」

「どうしても会いにいくときは、せめて俺達に一言断ってね? 困るから、俺達が」

「……はい」


 宣誓(せんせい)でもさせられてる気分だ。

 ただ、あの様子だと、もう鹿島くんは何も教えてくれないだろう。それなら、鶴羽樹側にいた鹿島くんとわざわざ一緒にいる必要がないのは事実だった。

 話がひと段落し、そろそろ行くか、と三人はそれぞれ上着を羽織る。松隆くんと桐椰くんが「そういえばテスト返って来た?」「あー、ぼちぼち。今日数学が返って来たくらい」と話しながら先に歩き出してしまったとき、不意に、月影くんに腕を掴まれた。


「えっ、なに」

「あの二人の前では言えなかったことだが」


 びっくりして振り返ると、月影くんは二人から極力距離を置こうとするように、歩くスピードを緩め、更に声も潜めた。


< 379 / 463 >

この作品をシェア

pagetop