第四幕、御三家の幕引
(三)眼前に振り翳した罰
「鹿島くーん」
「終業式に向けて忙しいんだが」
久しぶりに生徒会室に行くと煙たがられた。うんざりとした顔は、別れる前と同じだ。
「終業式ってまだしばらく先じゃん。あと十日くらいあるでしょ」
「二週間も経てば十日なんだが」
「そんなに仕事あるかなあ」
「挨拶文を考えるだけでも一苦労なんだが、君には一生分からないんだろうね」
嫌味や皮肉まで含めて何も変わっていない。むしろちょっとは変わってほしい。
変わったことといえば、私が松隆くんに「鹿島くんに探りを入れてきます」「ふぅん、十五分なら許可」と届け出たことくらいだ。
「そういえば、今日の先生たち、なんか落ち着かないよね。なんで?」
「……君、国公立志望なんだよな」
「そうですけど」
「合格発表の日程くらい知っておいたらどうだ」
冷ややか、というよりはやや引いている。そうか、明日は国公立大学の合格発表か。結果が午前中に出るのか午後に出るのか知らないけど、明日というだけで落ち着かないのはなにも受験生だけじゃない。意味は違えど、先生達だって首を長くしていい報告を待っているはずだ。
「なーるほどねー」
「意識が低いと呑気でいいな」
「そういう鹿島くんは国公立志望なんですか?」
「いや、俺は早稲の指定校推薦を貰う予定だから。来年の今頃はゆっくり大学生活の準備をしておく」
「…………イヤなヤツ!」
「君が見ているよりも生徒会長の仕事は大変なんだけどな?」
そういえば、桐椰くんもそんなことを言ってたな。ふーん、とミーティングテーブルに腰を下ろして頬杖をついた。
「じゃあ模試の結果とかどうでもいいんだ」
「そうだな。例えば模試の結果でE判定が出ていても俺には関係がない」
「うーわー、イヤなヤツ!」
「例えばって言っただろ。現実にE判定は取ってない」
「でも関係ないんでしょ。私は……」
私は、どうしようかな……。続ける言葉が出てこなくて、そのまま考え込んでしまった。