第四幕、御三家の幕引
 半田先輩を襲ったのが鶴羽樹であることは確かだ。それなら、鶴羽樹が半田先輩達を利用して、松隆くんと桐椰くんを別の場所に連れて行くことは有り得る。そして、その隙をついて私に手を出す……。でも、あの二人にそんなことをできるだろうか?

 やっぱり、懸念(けねん)事項はないんだよな……。

 うーんうーん、と考え込んむ私とは裏腹に、松隆くんは「大丈夫って言ってるじゃん。なにか心配?」と明るく言う。


「……やっぱり、これで終わるはずがないっていうか……」

「まあ、終わるはずはないんじゃない。明後日以降はなにか動きがあるんじゃないかって注意はしてるよ」

「なんで明後日なの?」

「国公立の合格発表が明日だからだよ」


 言いながら、松隆くんの視線が動いたと思ったら、私の後方から桐椰くんがやって来た。その表情は少し疲れている。


「どうだった?」

「例の半田先輩、私立は滑り止めの滑り止めしか止めてないっぽいな。センター利用に期待してた滑り止めが滑ったらしい。ってことは、センターの結果も悪いから……」

「本命も危ないだろうってことか。やれやれ」


 桐椰くんは前情報を確かめに行っていたらしい。私の隣にやってくると「あー、面倒くせぇことになったな」とぼやいた。


「面倒なの?」

「面倒だろ。って思ったけど、逆にやりやすいのか?」

「さあ、あんまり変わらなかったんじゃないかな。どうせ半田先輩一人で何かするわけじゃないんだし、元希望役員たちを()き付けるのは、遼の存在だけでも十分でしょ」


 半田先輩が不合格になったのは鶴羽樹の計画通り、そうとなれば桐椰くん達が半田先輩や元希望役員に襲われる可能性がある、か……。


「仕掛けてくるなら明後日、でいいよな?」

「多分ね。もし不合格だったら遼を襲おう、なんて具体的な八つ当たりを最初から考えてるとは思えないから」


 その後も、二人は半田先輩の仲が良い元希望役員が誰だとか、その受験の結果がどうだとか、そんな話をしていた。

 でも、どこか二人の話は腑に落ちず……。ずっと釈然としない気持ちだった。

 そのせいか、昼休みが終わって教室に帰る頃、桐椰くんが「なんか不安か?」と訊ねてきた。


「不安……っていえば、不安なのかな。言葉にはできないんだけどモヤモヤしてて」

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