第四幕、御三家の幕引
「三年の先輩のことなら心配ないと思うけどな。それに、案外総には手出さないかもしれねーから、アイツと二人でいれば問題なさそうな気も」

「というよりは、鶴羽樹が狙ってることって本当にそれだけのことなのかなって」


 いい加減話し尽くしたばかりのことだ、これ以上話しても(らち)が明かないことくらい分かっているけれど、考えずにはいられない。答えが出ないまま、頭の中でぐるぐると情報だけが空回りしている。

 私があまりにも不安がるせいか、桐椰くんも少しだけ考え込んだけれど、やっぱり答えが出るものではない。

 あーでもないこーでもない、と色々話したけど、最終的には「まあ、大丈夫じゃねーの」と楽観的な結論に至ってしまった。


「そもそも、鶴羽が学校に来ることはないしな。変に放課後残ってたら別だけど、お前だって俺達と一緒に帰るだろ」

「そうなんだけどさ……なんだろうね、こういうの。胸騒ぎってこういうのを言うのかな?」

「不気味なのは分かるけど、三年の出方を見てからでもいいんじゃねーか」


 ……二人がそう考えるのは分からなくはないけど、やっぱり漠然とした不安感が残る。

 鹿島くんは何も知らないと言ってたけど、鶴羽樹が何をしようとしてるか、なんとなく予想のつくところもあるんじゃないのかな。そういう観点からの聞き方はしていない。


「……鹿島くんに聞いてみようかな」

「鹿島、教えてくれねーんだろ?」

「知らないって言ってただけだから。本当に知らないとしても、何をしようとしてるかくらいの予想はつけてくれるんじゃない? ほら、桐椰くん達だって、幼馴染だから、松隆くんが何しようとしてるとかちょっと分かるところあるでしょ?」

「そりゃ、俺達くらいになればな。鹿島と鶴羽がそこまでかは分かんねーだろ。大体、幼馴染っていうなら、八橋から聞いてもいいんじゃねーの」


 桐椰くんが指す先には、真面目に次の授業の準備をして大人しく着席する八橋さんの姿がある。それもそうだ。ただ、八橋さんが鹿島くんを本気で好きだとしたら、形式上彼女──あれ、もう元カノなんだっけ──というのが気まずい。


「八橋さんか……」

「聞きにくいなら聞いてやろうか」

「ダメだよ、桐椰くんが聞いたら泣かせちゃう」

「俺を何だと思ってんだ」

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