第四幕、御三家の幕引
「前科があるでしょ、桐椰くん。ていうか、うん、八橋さんは何も知らなさそうだし……鹿島くんも八橋さんの話はしないし、鹿島くんに聞くのが手っ取り早いし、鹿島くんに聞いてみるよ」

「んー……。まあ、鹿島は何もしないかもしれねーけど、気を付けろよ。行くのは昼休みだよな?」

「うん、いつも通りね」


 ただ、さっき機嫌を損ねてしまったので、鹿島くんは明日訪ねることにしよう。

 しかし次の日、生徒会室に意気揚々と「明貴人くーん。あ、もう名前で呼ばないでいいんだっけ?」と(おもむ)くと、鹿島くんはいなかった。というか、生徒会室は空っぽだった。


「……あれ?」


 鹿島くん、今日は休みだったのかな。でもそれなら生徒会室の鍵が開いてるわけはないし……。しばらく待ったら来るかもしれないな、と鹿島くんの席に腰かけた。机の上は片付けられていて、鹿島くんが使っていた形跡はない。

 年末みたいに体調を崩して休憩室にいるのかな、と休憩室も(のぞ)いてみたけど空っぽだ。今日は生徒会の仕事がないのか、はたまた学校ごと欠席なのか。


「……でも、あの高熱出してでも来てた鹿島くんが休むかなぁ」


 ただの体調不良ではないとすると……海咲さんの命日だとか? 有り得るけど、海咲さんの命日は季節すら知らない。深古都さんの資料から推測すれば、鶴羽樹が怪我をしてから数ヶ月以内ではあるだろうけど、時期は覚えていない。季節すら思い浮かばないので推測のしようもない。松隆くんとか月影くん並みの記憶力があればよかったのに……。

 なんだろうなあ、と生徒会長の椅子に座って (鹿島くんに見つかったら多分怒られる)、手持無沙汰(ぶさた)にくるくると回ってみる。海咲さんの命日であることも、可能性としては有り得るけど、それだけなら午前中だけ休めば足りそうだ。透冶くんと違って、八橋一家は海咲さんの死後に引越しなんてしてないわけだし。

 もしかして、鹿島くん自身も鶴羽樹の(わな)()められたとか……。

 まさかね、なんて考えていると、ガラリと生徒会室の扉が開いた。なんだ、鹿島くん来てるんじゃん、と、回転した椅子が丁度。生徒会室の扉のほうへ戻る。


「鹿島くん、遅かったね──」


 そのまま、ガタン、と大きな音を立てて椅子は止まった。


「残念でした」


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