第四幕、御三家の幕引
 協力って、こういうことか……。教えてくれればよかったのに、と苦い気持ちになったけれど、そんなことを今更知ったところで何ができるという話ではなかったのは確かだった。


「思いつきにしては良かったと思ったんだけどなー。あれでいい感じに月影が退学になって、アイツら三人の評判も落ちてくれれば」

「……本当に、吐き気がするくらい陰湿で最低な嫌がらせだね」

「お前は大事な幼馴染が死んだことないから分かんねーんだよ」

「私が同じ立場でも、そんな風に御三家を憎んだりしない。全部自業自得の八つ当たりだよ」


 御三家が散々頭を捻っても「狙われる覚えがない」といったのがその証拠だ。覚えがないのも当然だ、だって御三家に責任なんて何もないんだから。

 まるで駄々っ子を見ているような、不愉快な気持ちになった。海咲さんが亡くなったことは誰の責任でもないのに、それを松隆くんと桐椰くんに転嫁(てんか)して、一生懸命納得したがってるだけだ。そううやってあの三人に散々責任を押し付けて、気が済んだら次は何に責任と原因を転嫁するつもりなんだろう。


「大体、松隆くんと桐椰くんに似てたせいで襲われたって、それは鹿島くんのセリフだよ。鹿島くんはあなたと歩いてたせいで襲われたんじゃん」

「違うね。アイツらがあんな風に有名にさえならなけりゃ、俺達は巻き込まれずに済んだんだ」

「そもそも鶴羽くんが今みたいにグレてなかったら、桐椰くんと間違えられることはなかったんじゃないの。大体、グレたのだって海咲さんが病気になったせいなんだろうけど、それは鶴羽くんの心が弱かったからだよね?」


 苛立ちに任せて口走った瞬間、鶴羽くんの腕が動いた。

 何かが一閃(いっせん)したのと、 私が思わず両腕で顔を(かば)ったのが同時。左手の甲に熱と痛みが走ったのも、それとほぼ同時だった。


「痛っ……」

「ぐちゃぐちゃ言ってないでさあ、さっさと死んでくれよ」


 抑えた手の指の隙間から、じんわりと血が(にじ)んでくる。そのまま右手の甲を(したた)るほど血が出ているってことは、深く切られたのかもしれない。

 つまり、鶴羽樹は思いっきり腕に向かってナイフを振ったってことで──ゾワリと肌が粟立った──本気で私を殺すつもりだってことだ。

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