第四幕、御三家の幕引
「ったく、誤算だったよな。アイツ、海咲が好きなのを忘れちまったんだ」


 溜息交じりの嘲笑をしてみせながら「もともとそんなにやる気なかったけどさ」と続けた。


「今日の計画はこうだった──まず前提として、明貴人はお前と付き合っとく。そうすれば、お前は生徒会室に来るし、それは彼女が彼氏に会いに行くだけで当たり前の行動で、それを松隆達が(とが)めることもない。それを今日までやり抜けば、松隆達に気付かれずに俺がお前をここに連れてくるのは簡単」


 そのとおりだ。私は、鹿島くんと条件付きで付き合っていたから、彼女らしく振舞うことまでその条件に含まれていると忖度(そんたく)した。だから足繁く生徒会室に通うことにした。私が自らとった行動ではあったけど、私が何もしなければ、鹿島くんがそれも条件として追加していただろう。

 鹿島くんと付き合うことは、鹿島くんが怪しいと御三家に思わせることだけだとばかり思ってた。でも、どうやらそこまで織り込み済みだったらしい。


「……でも、私達は先週別れてる」

「それが誤算だってんだよ」


 はーあ、と鶴羽樹は相変わらず呆れた態度だ。


「別に、今日来ないだけでアイツが浮気したとかそんなこと言わねーよ。アイツの役目は、お前を生徒会室に来させとくことだったんだ。それがこのタイミングで別れたとか言うんだぜ。でもって明貴人も、だからもう幕張(おまえ)が生徒会室に来る理由はないとか抜かしやがる」


 もしかして、昨日の鹿島くんが、生徒会室から出ていけと半ば苛立ったように言っていたのは、私を生徒会室に近づけたくなかったからだったのだろうか。

 まさか……。状況も忘れ、思わず考え込んだ。鹿島くんは、本当は協力するのをやめたんじゃ、なんて……。


「……今日の計画、鹿島くんには話してたの」

「いや? 明貴人には、今日までお前を生徒会室に来させとけってだけ頼んどいた。それなのに別れてんだから、ったく、腹が立ったね。どう考えても、お前に浮気したから、俺の邪魔をしたかったんだろ。別れたのだってそのためだ。形だけでも付き合ってたら情が移るもんなのかね? たまに生徒会室でキスしてたけど、あれマジだったのかな」


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